以下のレポートは知人が2年前に書いたものを今回私が加筆修正したものです。基本的に2010年9月末現在の情報に従っておりますが、一部それ以降の情報も含まれています。小中学生の方には前回のレポートより若干難しいと思いますので、どれか一つのテーマに絞って深く調べることをお勧めします。
はじめに
地球温暖化とは赤外線を吸収・放射する性質を持つ赤外活性ガス(温室効果ガス)が大気中に増加することによって地表面の温度が上昇するとされる現象である。Intergovermental Pannel of Climate Change (IPCC)によると、この100年余(1891~2007年)で全球平均気温の上昇は100年あたり0.67℃とされ
[i]今後2100年までに最大6.4℃の上昇が予測されており地球環境への重大な影響が危惧されている
[ii]。またIPCCによれば人間活動によって増加した温室効果ガスの中で化石燃料の使用による二酸化炭素(CO
2)が地表面の温度上昇にもっとも大きく寄与しており、経済活動の活発化によって今後も排出増加が見込まれる。このためこれらの排出規制を行うことによって将来の気温上昇を抑制しようとする国際的なルールづくり、たとえば京都議定書(1997年)の努力が行われている。その根拠となるべき科学的事実を考察していく。
1.温暖化のメカニズム
太陽光により暖まった地球から赤外線として熱エネルギーが出てゆくとき, 温室効果ガスによって赤外線がいったん吸収された後、半分が上方へそして残りの半分が地表面へ向かって再放射される。このため温室効果ガスがない場合に比べて温室効果ガスから余分のエネルギーを受け取るため地表面の温度が高くなると一般には説明されている
[iii]。
しかしこの説明は間違っている。対流圏中・下層においては温室効果ガスが赤外線を吸収してから再放射に要するまでの時間より他の気体分子(大部分は窒素、酸素などの赤外不活性分子)との衝突の方が早く起こるため「再放射」が起こる確率は極めて低い
[iv]。実際の大気放射は分子間衝突による衝突励起の状態からの放射が大部分を占めておりこれを局所熱力学平衡と呼んでいる
[v]。現在の「温室効果理論」はこのように科学的に誤った点から出発していることを忘れてはならない。
さらにIPCCによると温室効果ガスは二酸化炭素、メタン、一酸化二窒素、ハイドロフルオロカーボン類、六フッ化硫黄、パーフルオロカーボン類の6種類とされ、実際には最も多量に存在し赤外活性も広範囲の波長域におよぶ最大の温室効果ガスである水蒸気が意図的に除外されている
[vi]。このためCO
2が最重要な温室効果ガスということになっているが、実際には水蒸気の効果の方がCO
2より数倍も大きい
[vii]。このことはCO
2が十分に存在する現在においても冬季の乾燥した夜間に放射冷却が起こることを考えれば納得がいくであろう。地球温暖化問題を議論する時にはこのようなカラクリもきちんとおさえておかなければならない。
2.温暖化懐疑論者が提出している疑問点と温暖化論者の反論
温暖化懐疑論の争点は次の点に分けられる。
1) 地球は本当に温暖化しているのか。これには以下の2つの議論がある。
① 気温測定点の評価について
最近の気温測定点は周囲の都市化に伴い気温測定環境の劣化が指摘されており、2010年夏39.9℃の気温を記録した京田辺市の測定点は測定器にツタがからみつき風通しの悪化が認められた。これは氷山の一角で日本のかなりの地点
[viii]、米国の半分以上
[ix](station.org)など気象観測点周囲の環境の劣化による誤差が大きいと考えられている。これらは観測点の劣化だけでなく都市化の影響も大きく受けている。
これに対して温暖化論者は世界の平均気温に対する都市化の影響はほとんどないと強弁している。
[x]しかしこの唯一の論拠となっている論文も中国のデータの開示がないなど疑惑がもたれている。さらに1980年代後半以降世界平均気温に使用さている観測点は6000から1500に急激に減少しており脱落した観測点は田舎高地高緯度の地点であり、残存している観測点はほとんど都市化の影響をもろに受けるところである。
[xi]これはNOAA(アメリカ海洋大気局)の下部組織NCDC(気候データセンター)による謎の観測点の間引きと呼ばれており、わが国以外では有名な事実である。特にロシアやカナダでの高緯度地域での観測点の減少が顕著である
[xii]。NCDCをはじめとして、NASA(米国航空宇宙局)、日本の気象庁、イギリス気候研究所(CRU))などすべての世界気温データセットがこのデータを基にしており気候科学の根本的大問題となっている。
② データの取り扱いについて
IPCC第三次報告で有名になった樹木の年輪から過去の気温を再構築したMannのホッケースティック曲線は、1000年間ゆっくりと低下していた気温が20世紀後半になって急激な上昇を示すものだが、これには従来から定説となっていた中世温暖期も小氷期も存在せず発表当初から疑問視されていた。クライメートゲート事件以降この論文のデータねつ造があきらかになっている。
[xiii]20世紀末の温暖化も自然変動として異常なものではなく、1850年頃に終わった小氷期からの回復過程として全く矛盾しないものである。
[xiv]これに対して温暖化論者はMannの誤りは引用の誤りであり結論はなんら変わらないと強弁しているようである。
[xv]
2) 温暖化の原因が温室効果ガスの増加によるものかどうかという点については次の二つの議論がある。
① 太陽活動など他の要因はないのか。
20世紀の太陽活動周期長と北半球気温の相関
[xvi]や14Cを用いた屋久杉の研究から約11年の太陽周期長と気温が逆相関の関係にあることが示唆されている
[xvii]。これは太陽磁場を介した宇宙線と雲に関するSvensmark効果を介して説明される。
[xviii]また太陽磁気活動が北極振動を通じて地球気候に大きな影響を与えているという報告もある
[xix]。
これに対して温暖化論者は20世紀後半においては太陽活動の活発化は見られず、20世紀後半の急激な温暖化は太陽活動では説明できない。温室効果ガスの影響を考慮しないと説明できないと主張している。またSvensmark効果に関してはa)理論的な証明が不十分である。b)宇宙線量に関して(雲の形成による温度上昇を説明するのに必要な)長期的傾向が見られない。などの反論がある。しかし、上述したようにすべての世界気温データセットにおいて1980年代以降都市化の影響を受けやすくなっており、それによって太陽活動とのかい離が出てきた可能性が濃厚である。宇宙線と雲に関しては現在CERNによる実験が進行中であり、この結果待ちである。
3) 増加したCO2は本当に人為起源なのか。
CO2は大気中の60倍も海水中に溶存している。また人間活動によって排出されているCO2の何十倍もの量が生物圏、海洋と大気の間を行き来しており
[xx]、化石燃料由来のCO2は自然起源の5%程度である。自然の炭素循環がすべてバランスが取れているという観測結果はどこにもない。「自然の炭素循環は常につり合いがとれている」というのは何の科学的根拠もない温暖化論者の妄想に過ぎない。したがって自然界におけるトータルの炭素循環を考えると大気中に増加している二酸化炭素のうち人為起源のものは多くても5%程度と考えるのが妥当であろう
[xxi]。しかし温暖化論者は自然界の炭素循環は常にバランスが取れている仮定した図を根拠として大気中に増加したすべてのCO2を人為起源としている。また完新世以来、一定だったCO2が産業革命後から増加したとする氷床コアから再現したグラフを唯一のよりどころとしているが、氷床コアの粗い分析をKeelingの精密な測定に滑らかになるように80年ほどずらしてつなげたものであり批判が多い。
[xxii]実際に化学的方法による大気中CO2濃度測定が19世紀より行われており、この値と氷床コアの再現値との矛盾が指摘されている。
[xxiii]
また南極ボストーク基地の氷床コアの分析によると過去16万年の気温と二酸化炭素濃度の変化は気温の変化が先に起こっており800年ほど遅れてCO2濃度が追随している
[xxiv]。これはヘンリーの法則によって海水温が上昇し海洋から大気へのCO2の移動が起こった結果として何ら矛盾しない。そして氷期・間氷期の大きな温度変化は太陽と地球の位置関係、地軸の傾きや公転軌道の離心率の変化あるいは歳差運動などの(ミランコビッチサイクル)で起きていると考えられている。
[xxv]
4) 温暖化したときの被害予測は本当に正しいのか。
これには次の二つの議論がある。
① 100年後のシミュレーションは信頼できるのか。
コンピューターシミュレーションによる21世紀末の気温予測は正しいとする考えはコンピューターモデルで過去の気温変化を再現できるという論拠によっている。しかしこれは答え(過去の気温観測記録)に一致するようにパラメーターをいじった結果であり、過去が再現できるからそのモデルの予測が信頼できるという根拠にはならない。1980年代の今から見れば幼稚なコンピューターの時代から現在の最新鋭のスーパーコンピューターまで過去の気候変化を再現できるコンピューターモデルは数多く存在するが、2100年の予測がみな同じわけではない。これはそれぞれが違った数式やパラメーターによって過去の気候を再現しているに過ぎないことを示している。モデルの一番の欠陥はグリッドが大きすぎて「雲」がきちんと表現できないことである。最重要のこの部分を「パラメーター」に頼っていては信用せよという方が無理というものであろう。さらに気候システムのような非線形現象はコンピューターシミュレーションには不向きで、他の研究者による再現も不可能で到底「科学」とは呼べないものである。
[xxvi]
② 温暖化の悪い側面のみが強調されていないか。
気温が○℃上昇するとマラリアや伝染病が各地で流行し熱波で毎年何万人もの人々が死亡する。ハリケーンが巨大化し大きな被害が出る。などなどまさにホラー話の洪水である。しかし気温上昇の予測自体が不確かな話であるので以後のストーリーも全く根拠がないものである。このような作り話で環境省が国民を脅しているのだからあきれてしまう。
[xxvii]たとえばわが国ではマラリアは媒介動物の撲滅によって根絶できたのであって気温が低下したため流行がおさまったわけではない。気温が上がったからといって再度流行地になるというのは全く根拠がない。温暖化傾向の20世紀中でもむしろマラリア流行地は縮小している。
[xxviii]
乾燥化するところがあっても現在水不足のところで降水量が増加するかもしれないし、現在冷涼地で耕作に適さない土地でも耕作ができるようになることもある。熱波で亡くなる人が増加してもインフルエンザで亡くなる人の減少の方が多いかもしれない。温暖化論者の予想は意図的に悪影響だけを取り上げて誇張しているに過ぎない。
3.地球温暖化の影響
地球温暖化の影響として大きく分けて二つになる。
1)気象現象および生態系への影響
2)社会への影響
その詳細は以下の事柄が懸念されている。
①a.降水量の増加
b.熱帯雨林の乾燥化や崩壊
c.海水面の上昇
d.生物の生息地の変化
e.生物種の数割にわたって絶滅の危機
f.海流の変化
②a.気候の変化による健康への影響や生活の変化
b.低緯度の感染症の拡大
c.農業、漁業などを通じた食糧事情の変化。
これらすべてに反論することは字数の関係で不可能だが、たとえば1cの海水面上昇についてツバルなどが沈むと一般に報道されているがこれも根拠がないヨタ話である
[xxix][xxx]。また2bのマラリアについては上で述べた。
原則としてこれらはすべて二酸化炭素温暖化説が正しいと仮定しての話であり、今まで述べてきたことから全くの杞憂と言える。歴史的にも7000年前から5000年前にかけてのヒプシサーマル期と呼ばれる完新世最温暖期や前述の中世温暖期など温暖期にこそ人類は繁栄してきたという事実がある。万が一、温暖化説が正しいとしても人類活動に対して言われているほどの悪影響があるというのは根拠がない。
4.まとめ
人為起源の二酸化炭素で地球が温暖化しているという科学的根拠はない。にもかかわらず、この問題がここまで大きくなったのはなぜだろう。まず、国連によるIPCCの設立によって「情報の権威付け」ができた。「IPCCがこう言っている」これが温暖化論者の決め台詞となった。しかしクライメートゲート事件以後査読論文しか引用しないはずのIPCC報告書にGreenpeaceやWWF(世界自然保護基金)の報告書が多数引用されていることが暴露された。
[xxxi]さらにその後IPCC報告書の著者の中にこれら環境団体の活動家が多数含まれていることもわかった。
[xxxii]WWFはそのHPで「地球温暖化の目撃者たち」
[xxxiii]というプロジェクトを行い、「すべてにIPCCの科学者による科学的影響の背景説明がついているのが特徴」と自慢げに宣伝しているが、我田引水もはなはだしい。IPCCという権威による体のいい情報ロンダリングである。そして狂信的温暖化支持者は自分たちの主張と違う意見を発する科学者に対して、「石油業界のまわし者」「ホロコースト否定論者」などという反論の本質とはまったく関係のない罵声を浴びせた。それでまともな科学者は沈黙するにいたった。
また好ましくない出来事はすべて地球温暖化の影響として報道するメディアにも大きな責任がある。上に述べたように「ツバルが沈む」や「キリマンジャロの氷冠の縮小」、「ホッキョクグマの受難」などはほとんどはウソかあるいは事実であっても温暖化とは無関係の出来事である。
問題が巨大化するにつれて研究者にも温暖化関連の研究で莫大な予算が取れる(そうしなければ研究費が取れない)など人為的温暖化に反する結論の論文が出しにくい状況になっていった。またクライメートゲート事件で明らかになったように査読の段階において温暖化支持派が徒党を組み反対論文が世に出ないように細工する
[xxxiv]など行動が非倫理的方向にエスカレートしていった。
さらに少なくとも日本国内では省庁がこの問題を利用して省益を拡大しようとこの風潮を助長している。1997年の「京都議定書」当時一介の「庁」に過ぎなかった環境庁が多くの省庁が合併して行政のスリム化が図られるなかで例外的に「省」に格上げされた。これには温暖化問題が大きく影響していると考えられる。さらに同省は排出権取引・炭素地下固定事業・炭素税の導入などをもくろみ天下り法人の設立や自分たちが独占して使用できる特別会計制度創設を狙っているように思える。
以上官・学・メディアの連携によって温暖化問題はここまで大きくなったといえるであろう。このように皆が皆同じ方向を向いているときには何かがあるというのは先の大戦を振り返ればわかる。我が国はこのことから学ぶべきことが多いと言える。国際的には排出権取引価格の暴落、IPCCへの解散要求が起こっている中我が国は全くの情報過疎となっている。このままでは世界から取り残されるであろう。国が滅んでも自分の研究費さえ取れればいいという研究者がいまだにいるのは日本国民として誠に残念である。
[xiv] 赤祖父俊一;正しくしる地球温暖化、誠文堂新光社(2008)
[xviii] Svensmark,H:Cosmoclimatology: a new theory emerges
Astronomy & Geophysics 48 (1), 1.18–1.24.(2007)
[21回]
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