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悪魔のささやき

気象予報士の視点から科学的に捉えた地球温暖化問題の真相を追究。 地球温暖化を信じて疑わないあなたの耳元に聞こえる悪魔のささやき。それでもあなたは温暖化信者でいられるか?温暖化対策は税金の無駄遣い。即刻中止を!!! Stop"Stop the global warming."!!

   

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暁新世・始新世温度極大期;1.概要

私のブログを訪れてくださる読者の一部は勘違いしているようだが、私は地球温暖化が脅威でないと言ったことは一度もないし、CO2が温暖化の要因ではないと言ったこともない。温暖化の真実を知りたいだけである。・・・・・・・なーんちゃって。(笑)その証拠といっては語弊があるが、今回は昨年1月(1年半もたってる!)の気象予報士会での発表をもとにPETMについて少し書いてみる。
 
化石燃料起源の二酸化炭素が大気中に貯留し、その赤外活性効果(温室効果)によって気温が上昇しひいては大災害や生物の大量絶滅を引き起こす。これは温暖化論者の最も喜ぶ(危惧している?)カタストロフィックなシナリオである。一般にこれは根拠のない妄想と考える人もいるかもしれないが、実は歴史上そのような事件が実在したと考えられている。今から約5500万年前に起こった暁新世始新世温度極大期(Palaeocene-Eocene Thermal Maximum;PETM)がそれである。
PETMは1991年のKennett&Stottが底性有孔虫の殻の酸素および炭素同位体比の異常と底性有孔虫の過去9000万年で最大の絶滅を報告したのが最初とされ、以後現在まで多くの知見が蓄積されている。炭素同位体比の異常、つまりCIE(carbon isotope excursion)とは12Cに富んだCO2あるいはメタンが大気海洋系に短期間(数千年内)に大量に注入されたことにより海洋生物の石灰殻や陸上生物の歯でもδ13Cの負の方向への移動が指摘されている。注入された炭素の量は炭素換算で2000~4000GtCにも及ぶと推定され、現在の人類による化石燃料消費と期間・量ともに極めて似ており現在進行中の気候変動との関連が注目されている。
この時代が急激に温暖化したことは、熱帯域では海表面45℃におよぶ上昇深層水温も同程度の上昇をしたことが酸素同位体比(δ18O)の負移動や石灰殻のMg/Ca比から示されている。陸上生物圏では北半球では熱帯生物の北上が指摘されている。高緯度地域では北極圏での海表面温18℃から23℃と著明な上昇が指摘され、北緯80°に位置するエルズミア島ではこの時代に森林が繁茂ワニなどの爬虫類や哺乳類も生息していたことが知られている。浅海域では熱帯性の渦鞭毛藻が大陸に沿って高緯度域まで大繁殖しており、このことには海水温の上昇だけでなく海水準の上昇も関与していると考えられている。またPETM時にはcalcite compensation depth (CCD)が2kmも浅くなっており、一過性の海洋酸性化が起こったことも示唆されている。
上に述べたようにPETMは大気中CO2(メタン)濃度の極端な上昇とともに、地球の平均気温が4~5℃上昇し海水準の上昇、海洋の酸性化および底性有孔虫の絶滅が同時期に複合的に起こったイベントと考えられている。まさに温暖化論者が泣いて喜ぶ組み合わせで、現在進行形の気候変動の最終的な終着駅との考えも存在している大変重要なイベントである。松岡の論文の「はじめに」の部分が割とまとまっているようだが、私の知る限り日本語では適当な総説がない。英語ではPETM研究の最先端の一人であるユトレヒト大学のAppy Sluijs大変素晴らしい総説がある。ぜひ一度読んでいただきたい。また拙ブログの左欄からはSluijsの研究サイトにリンクしている。こちらは少し専門的で骨が折れる内容だが興味のある方はどうぞ。PETMは「これを知らずして現在の温暖化を語るなかれ」とまで言われている新生代初期の大事件である。まだ長くなりそうなので今回は概要のみとする。続く(予定)
 
本項の要旨は日本気象予報士会西部支部2008年1月例会(2008年1月12日)にて「暁新世・始新世温度極大期最新の知見」として述べたものです。

2009年7月16日一部修正(参考文献、リンクなど)

参考サイト 
The Canadian Encyclopedia : Ellesmere Island Eocene Fossils

参考文献
Tripati,A and Elderfield,H.Deep-Sea Temperature and Circulation Changes at the Paleocene-Eocene Thermal Maximum Science 308.  pp. 1894 - 1898(2005)
有孔虫のMg/Ca比から熱帯・域亜熱帯域の深層水温が45℃上昇
 
PETM時の太平洋の海表面は4~5℃上昇した。
 
 
 
Thomas,E & Shackleton,N.J. The Paleocene-Eocene benthic foraminiferal extinction and stable isotope anomalies.Geological Society, London, Special Publications 101.pp 401-441(1996)
 PETM時にはこの7500万年で唯一の底性有孔虫の大量絶滅が起こった。数千年間に30~50%の多様性の減少が認められた
 
 
 

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