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悪魔のささやき

気象予報士の視点から科学的に捉えた地球温暖化問題の真相を追究。 地球温暖化を信じて疑わないあなたの耳元に聞こえる悪魔のささやき。それでもあなたは温暖化信者でいられるか?温暖化対策は税金の無駄遣い。即刻中止を!!! Stop"Stop the global warming."!!

   

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裸の王様症候群の終焉

 それは一昔前には想像すらできない光景だった。

演者席には磯崎行雄が座り自らパソコンを操作しながらプレゼンテーションを行っている。

「地球温暖化というのはこのような『脅し』(冠水した都市の写真)とか、このような『かわいそう』(氷の上のシロクマの写真)とかいうものから成り立って・・・・・。」

それにうなずきながら丸山茂徳が左右の椅子に両手を広げ、天を仰ぐようにどっかと最前列に構えている。中央、前から5列目ほどに座っている私をはさむようにして右端には伊藤公紀が、左端には大御所赤祖父俊一が陣取っている。そして彼らは二酸化炭素温暖化説への異論を唱えているのだった。温暖化に異議を唱えるだけで人間性を疑われた時代から考えれば到底信じがたい状況であった。2008525日幕張メッセで開催された日本地球惑星科学連合大会のセッション「地球温暖化問題の真相」後に行われた自由討論会のひとコマである。

 私はその日だけスケジュールが空いていたので日帰りの強行軍で参加したのだが、到着直後から驚きの連続だった。午前中からの口演のキーワードは「太陽、宇宙線、雲、アルベド」であり、気候変動がテーマでありながら「温室効果、CO2」というタームは演者の口からは全く出てこないのである。そんな雰囲気の中で「IPCCでは・・・」などと典型的な温暖化支持派的質問を演者に浴びせる関西なまりの若者がいた。私は当初、彼のあまりのIPCC信者ぶりに環境団体の人間に違いないと思ったのだが大外れだった。口演終了後のアンケートの折に「気象の専門家で気候モデルをやっている」と自己紹介していた。

 磯崎のプレゼンテーションがIPCC4次報告の「過去2000年の気温変動のグラフ注1」(いわゆる改良型ホッケースティック:中世温暖期、小氷期は一応存在するものの現在が極端急激な高温)に差し掛かり「過去2000年で最も気温が高い、過去にない急激な気温上昇が問題とされている。」という説明。それに対して「近年は測定条件が悪化しており測定値自体の信頼性が低いことが指摘されている。最近のアメリカでの調査ではまともな測定所が少ない。」と伊藤公紀。これに件のモデラー氏が反論。IPCCでは都市化の影響などはきちんと計算して・・・。」即座に伊藤が一喝。「計算じゃダメなんだよ!現場を見なきゃ!」伊藤の指摘は測定場所の横に建築物ができたり、コンクリートの駐車場になったりで最近は「芝生の上の百葉箱」とは程遠い条件で測定されたデータが多いということなのだが(http://www.surfacestations.org/参照)、コンピューターばかりいじっている「計算至上主義」のモデラー氏には理解できなかったらしい。さすがはモデラーだ。(笑)伝え聞くところによると、510日に行われた気象予報士会の討論会でもこれと同様の趣旨の発言をした先生がいたそうだ。温暖化論者というのは机上の計算がすべてのようだ。(笑)

 私のような立場の場合、周りはみんな敵だらけというのは普通の状況である。ところが200名ほどのこのセッションの会場内は演者も含めて大部分が「二酸化炭素温暖化説」に批判的な立場をとっている人で構成されており、日頃から「コンセンサス」を武器に「主流派」を自負している温暖化論者にとってはこのような「四面楚歌」的な状況は初めての経験だったであろう。このモデラー氏もいつもと勝手が違ったようで気の毒だった。

 このようにそれぞれの分野のビッグネーム達(門外漢の私でも名前を知っているという意味)が学会内においてさえ公然と二酸化炭素温暖化説に反論を始めたことは特筆すべきできごとである。一人が勇気を出して声を出してみたらそれに同調する人間が意外に多かったというのが現実のようである。裸の王様も一人の子どもの「あの王様、裸だ。」の一言からあっという間にペテンがばれていった。この問題も科学的な決着にはさほど時間はかかるまい。それでも政治の暴走は当分続くだろうが、あとは専門の科学者がきちんと政治家をコントロールすべき問題である。私のような素人がああだこうだと捨石覚悟で声を出さなければならないいやな時代はやっと終わったようだ。

注1 :私が見たのはここの図5、過去1300年のグラフのようです。中世の温暖期が中ほどにありホッケースティックより期間が長いことはわかったのですが、次はもう少し視力を鍛えていきます。(笑)失礼しました。(2008/7/5)

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CO2倍増時の吸収エネルギーの増加と全天日射量の変化

注:2008年2月20日過ぎ、CO2 Scienceがサイト上で「二酸化炭素温暖化に反論するDVDを発売する」と発表した直後からサイバーテロに襲われダウンしてしまいました。現在は最新号のみ閲覧できますが、過去ログにはアクセスできない状態です。拙ブログからのCO2 Scienceへのリンクは切れたままです。復旧しましたらまたリンクをやり直す予定です。しばらくは御不便をおかけしますが御理解いただきますようお願い致します。(悪魔のささやき管理人、はれほれ)
 
温室効果の説明図を見ると、高層の温室効果ガス(以下GHG)の層から地表へ向かって矢印が描かれており、あたかもGHGが地表へ向かって放射を行ったり熱を移動させたりするようになっている。しかし、熱力学の第2法則によれば高層低温のGHGからより高温の地表に向かって熱が移動することはあり得ない。また実際に長波放射を吸収したGHGが赤外線を再放射するまでの時間は大気中の赤外不活性分子である窒素や酸素などと衝突するまでの時間より長い。そのため衝突によって失活する確率のほうがはるかに大きくGHGの赤外線再放射は極めておこりにくいことが示されている。このことからGHGの本質的な役割は地球から逃げる熱の一部を吸収して酸素や窒素などの赤外不活性分子に衝突して受け渡し、大気温度を上昇させるところにあると考えられる。そこで温室効果ガスが増加するとどれくらいの長波放射の吸収が増えるかということを考えてみる。この点に関してはBarrettが詳細な検討を行っている。
Table1.jpg

Table1 Barrett,Jより引用



Table 1は288Kの黒体放射に対するそれぞれのGHGの吸収率を地表面から100mの光路長で見たものである。つまり1気圧の乾燥空気(窒素、酸素、アルゴン)にそれぞれのGHG 1種類だけを混じてその吸収スペクトルの全放射エネルギーに対する割合を測定したものである。一番上の水蒸気は相対湿度45%で測定されている。(15℃の飽和水蒸気圧は約17hPaであるので相対湿度45%=7.65 hPa=約0.755%)水蒸気の場合地球からの長波放射のエネルギーの68.2%を吸収したというのがこの表の意味である。順に産業革命前の濃度285ppmvのCO2単独では17.0%のエネルギーを吸収している。そしてCO2濃度が倍増して570 ppmvになれば吸収されるエネルギーは18.5%に増加する。メタンの吸収エネルギーは1.2%、一酸化二窒素は0.5%となっている。そして下から3行目の「total」にはこれらの値を合計すると全放射エネルギーの86.9%を吸収することになることが示されている。ところが実際にすべてのGHGを同時に混入してみるとCO2濃度285ppmvでは全放射エネルギーの72.9%、570ppmvでは73.4%の吸収にしかなりませんよというのが最後の2行である。これは水蒸気と他のGHG間で吸収スペクトルの重複があるためである。したがってCO2濃度が倍増すれば理論上は1.5%の吸収エネルギーが増加するわけだが、実際は0.5%の吸収増しか認められない。右列の数字は濃度0.755%の水蒸気の吸収エネルギーを1としたときの各GHGによる吸収エネルギーの割合を示している。
 
またTable 1によれば産業革命前のCO2濃度において高度100mで吸収されるエネルギーは地表放射の72.9%であるから、残りの吸収可能なエネルギーは27.1%である。一方、大気には全く吸収されない「大気の窓」と呼ばれる波長域のエネルギーが存在しこれが22.5%を占めている。吸収可能なエネルギーの残りは
27.1-22.5=4.6(%)
しかない。これがCO2倍増時には4.1%に減少する。ところが、次の100mでも同様に73%程度のエネルギーが吸収されるとすると
0.046x(1-0.73)=0.012
である。したがって地表面からの放射エネルギーのうち吸収可能なエネルギーの99%近くが地上200mですでに吸収されていることになる。
Table2.jpg

Table2 Barrett,Jより引用



Table2は各GHGの全体の吸収エネルギーに占める寄与度である。水蒸気の場合は前掲のTable1から
68.2÷86.9x100=78.5%(288K、相対湿度45%)
とされている。吸収の重なりを他のGHGの吸収と考えた場合の水蒸気の寄与度に相当するとされているが、厳密には近藤邦明のように
{68.2- (86.9-72.9)} ÷72.9x100=74.3(%)
とすべきであろう。また吸収の重なりを水蒸気によると考えた場合は
68.2÷72.9x100=93.6%(288K、相対湿度45%)
となる。この数値が「温室効果の90%以上は水蒸気である。」の根拠となっていることは言うまでもない。
 
さてこのCO2倍増による0.5%の吸収エネルギーの増加がいったいどのくらいの気温上昇をもたらすのであろうか? Barrett は論文の後半においてGHGの有無による温度差33K(288K -255K)から概算してCO2倍増時の温度上昇を0.3℃程度としている。これについては原著や下記のTheorySurgeryの考察を参照してほしい。ただ私自身はこの33Kという値には疑問を持っているので少し違った角度からその影響を検証してみる。
 
ステファンボルツマンの法則から288Kの黒体放射は
5.67x10-8x2884=390(W/m2)
したがってCO2倍増時に温室効果によって余分に吸収されるエネルギーは
390x0.005=1.95(W/m2)
これは1m2あたり1秒につき1.95Jのエネルギーが吸収されることを意味している。1日当たりに換算すれば
1.95x60x60x24=168480(J/m2)=0.17(MJ /m2)
1年あたりでは
0.17x365=62.1(MJ /m2)
となる。これを太陽から受け取るエネルギーと比較する意味で全天日射量と比べてみる。たとえば1日あたりのデータは下記の「ドイツ太陽光エコファンド」のサイトに詳しい。この表で福岡を例にとると最大値は2000年の14.2 MJ /m2で最小値は1993年の11.5 MJ /m2である。年々の1日あたりの平均の日射量でもこれだけ変動があるわけで、はたして0.17 MJ /m2の放射強制力の上乗せがどれくらいの意味を持つのであろうか?確かに1993年は寒冷な年であったが24年間の平均値と比べて1.66 MJ /m2もの日射量の減少があったわけである。また下の表は日立市天気相談所のサイトから転載した1982年から2007年にわたる日立市の全天日射量の年間値である。

日立市年間全天日射量(日立市天気相談所HPより)

年間全天
日射量(MJ/m2)

1982

 4832.8

1983

4667.1

1984

4819.4

1985

 4489

1986

 4508.3

1987

 4483.6

1988

 4576.7

1989

 4560.6

1990

 4401.7

1991

 4097.9

1992

 4232.9

1993

 3949

1994

 4501.5

1995

 4048.2

1996

 4185.5

1997

 3912.5

1998

 4378.9

1999

 5005.6

2000

 5029.1

2001

 5071

2002

 5061.7

2003

 4741

2004

 5223.2

2005

 5147.4

2006

 4592.3

2007

 5164.2

これを見ると4000 MJ /m2以下の少ない年から5000MJ /m2を越える年まであり変動幅は1300 MJ /m2を越えている。ここにCO2倍増時の温室効果上乗せ分 年62.1 MJ /m2が加わったとして果たして有意な影響があるとはとても思えない。ここのサイトは年平均気温や年最高気温の経年グラフもあり、これらと全天日射量の相関などを調べてみるのも面白いかもしれない。といっても自分でやる気はさらさらないが。
 
以上より「CO2倍増時の温室効果の増加分より全天日射量の自然変動の方がはるかに大きくCO2倍増によって有意な気温変化が起こるという確証は認められない。」というのが今回の一応の結論である。この結論に対して「温室効果の増加分はすべて大気を暖めるが、全天日射量の場合は地表面への入射に過ぎない。」など温暖化論者から反論があるかもしれない。しかし平均的な地球のアルベドを30%としても太陽放射の自然変動に比べて温室効果の増加分はけた違いに小さい。もしも温暖化論者のいうように二酸化炭素濃度が倍増したときに壊滅的な影響が地球環境に起こるのなら、全天日射量が100 MJ /m2増加しただけでも同様の変化が起こるのではないか。それならこの20年あまりで何回も地球は大打撃を受けていなければならないことになる。
 
本稿の内容の一部は、日本気象予報士会西部支部2007年11月例会において「『温室効果』にみる嘘と誤魔化しと間違い」のなかの一項目として述べたものです。
 
参考論文
中田宗隆:地球温暖化現象に学ぶ物理化学の基礎(3)現代化学No.444(2008) 
Barrett,J:Greenhouse molecules their spectra and function in the atmosphere. Energy & Environment Vol.16 p1037(2005)

参考サイト

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「地球温暖化で永久凍土が融解する」という妄想

 Osterkampは2007年の論文で以下のように述べている。
20世紀の地球温暖化が永久凍土を融解させており地形の不安定性に関連しているという先入観がある。しかしながら適切なデータは少ないものの、公表されたデータはそのような見解を支持していない。
 結局Osterkampは1977年から増大した積雪量が重大な役割を果たしており近年の永久凍土の融解の半分からほとんどすべての原因であると述べている。
 またZhangらはイルクーツク(ロシア)での永久凍土に関する気温、降水量、地熱の19世紀末から20世紀末までの長期にわたる貴重な観測記録を報告している。
1890年代から1990年代にかけて気温、降水量ともに増加しているが、気温の変化は主に冬季、降水の変化は主に夏季に起こっている。年平均気温と年降水量は逆相関の関係にあった。秋の初雪の時期は変化がなかったが春の積雪の消失の時期は一貫して早くなった。
つまり冬季の気温の上昇傾向と夏季の降水の増加傾向を認めたということだ。さらに、
気温の上昇は1960年代までわずかであったのに対し、平均土壌温度は全期間を通して絶え間なく上昇しつづけていた。この事実はこの地においても気温の変化だけで土壌温の変化を説明できないことを意味している。
夏には気温はわずかに上昇するにもかかわらず土壌温は4℃まで低下する。これは降水量の増加と土壌中の水分によるフィードバックと考えられている。
 これらの観測結果は「地球温暖化で永久凍土が融解する」という温暖化教の教義に事実の裏づけがないことを明白に示している。
冬の間、気温は4℃から6℃に上昇したが、土壌温は9℃まで上昇した。これは10、11月の降雪の増加と早春の融雪が隔離とアルベドの変化を解して重要な役割を果たしているかもしれない。」 
 結局雪に覆われると地熱の放出が妨げられて永久凍土が融解しやすくなり、春先に早く雪が解けるとアルベドが変化するということのようだ。したがってOsterkampの結論のようにここでも「気温」ではなくて「雪」が永久凍土の融解の鍵を握っているようである。真冬の北極圏で大雪が降るようになったら永久凍土が融ける心配をしなければ・・・・ということか?

参考論文
Osterkamp,T.E.;Characteristics of the recent warming of permafrost in Alaska. J. Geophysic. Res. 112:1029(2007)
Osterkamp, T.E.;Causes of warming and thawing permafrost in Alaska. EOS, Transactions, American Geophysical Union 88: 522-523(2007)
Zhang, T et al.;An amplified signal of climatic change in soil temperatures during the last century at Irkutsk, Russia. Climatic Change 49: 41-76(2001)
参考サイト
CO2 science:Late 20th-Century Thawing of Alaskan Permafrost
悪魔のささやき:再び永久凍土

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イソプレンのまとめ

 植物が放出する非メタン系揮発性炭化水素はBiogenic Volatile Organic Carbon(BVOC)と言われ年間総排出量は1.2GtCと推定されており地球上の炭素循環を考える上で無視できない量となされている。BVOCはイソプレンなどのテルペン類やエタノールなどの低級炭化水素などに分類されこのうち総量の半分がイソプレンと言われている。
 イソプレンは反応性が極めて高く、大気中のヒドロキシラジカル基と反応してオゾンを生成し、対流圏オゾン生成の主たる反応を担っている。またイソプレンはオゾンとも反応しピノンアルデヒドなどエアロゾルの凝結核となる粒子状物質の生成に関与している。これらの反応においてメタンの酸化に関与するヒドロキシラジカル基やオゾンを消費するため間接的にメタンの寿命を延ばす効果があるとされている。
 Yokouchiはイソプレンおよびその反応生成物濃度は夏季には昼間に高く、冬季にはピーク値は夏季と変わらないが昼間の濃度の方が夜間より低いことが多いと報告している。またTaoらは地球レベルでのイソプレン放出は熱帯域に集中していることを示している。(Yazakiの図を参照)
  以上の観測事実からイソプレンは主に熱帯性の樹木から特に夏季に多く放出されており、その沸点が約34℃と低いことから植物を高温から保護する働きをしているのではないかとの仮説が考えられる。Sasakiらはポプラからクローニングしたイソプレン合成酵素の遺伝子を本来イソプレンの分泌能力を持たないシロイヌナズナに移植し、高温耐性の実験を行った。60℃、2時間の高温処理で野生種は回復不能となったが形質転換体の方はこの処理に耐性を示したと報告している。しかもこの形質転換体の放出するイソプレンはポプラの1000分の1の量に過ぎないにもかかわらず、高温処理中の葉の表面温度は形質転換体の方が常に3~5℃低いという。
 谷らはミツマタの葉を用いて温度と光がイソプレン放出と光合成に及ぼす影響を調べている。この結果光子量の増加とともにイソプレン放出、光合成量ともに増加したが、葉温については光合成量は30℃でピークになるのに対してイソプレン放出は葉温40℃まで増加傾向を示したと報告している。これは光合成を行うRubisco活性が30℃前後が適温であるのに対してイソプレン合成酵素(isoprene synthase)の適温が40℃前後にあるためと考えられている。このため40℃近辺では光合成で固定された炭素が数%のオーダーでイソプレンとして放出されると推定されている。
 現在最もよくイソプレンの放出量を推定できるモデルはG93と呼ばれており、光強度と葉温からイソプレンの放出量を推定するモデルである。このモデルに近いものが当然気候モデルにも採用されているものと推測できる。しかし、MonsonらはCO2濃度が上昇するとイソプレン放出が減少するという観測事実を報告しておりモデルと実測値とのギャップを問題にしている。このことは以前にも拙ブログの「気候モデルとイソプレン」で述べた。 
 私がこの問題で不思議に思うのは「水ではなくてわざわざ自分で合成した物質を蒸発させて温度調節をするのだろうか?」ということである。動物が発汗によって体温調節をするように植物も気孔から水を蒸発させて温度調節をした方が合理的ではないかと思うのだ。しかもイソプレンの放出域は水の乏しい乾燥地域ではなく、いわゆる熱帯雨林と一致している。なぜそのような地域で水を使わずにイソプレンを放出するのであろうか?私なりに考えられる理由を推測してみた。ひとつには「雨季と乾季が存在し高温乾燥の気候に耐えるため」もうひとつは「高温多湿で相対湿度が100%に近く水の蒸発がおこりにくい環境に適応するため」という二つの理由が考えられる。このどちらがより正解に近いのか、あるいはどちらも見当違いなのかは今後の研究結果待ちだが、わざわざ手間ひまかけて作ったものを惜しげもなく捨てさるなど私のような小市民にはもったいなくてとてもできそうもない。

参考論文
, 伏見 嘉津裕: “温度と光強度がミツマタのイソプレン放出におよぼす影響”. 農業気象, Vol. 61, pp.113-122 (2005)
Sasaki,K et al.: Plants Utilize Isoprene Emission as a Thermotolerance Mechanism.Plant Cell Physiol.48;1254-1262(2007)
Yokouchi,YSeasonal and diurnal variation of isoprene and its reaction products in semi-rural area.Atmospheric Environment 28;2651-2658 (1994)
Guenther,A.B.:Isoprene and monoterpene emission rate variability - Model evaluations and sensitivity analyses. J of Geophy. Res. 98;12,609-12,617(1993)
参考サイト
矢崎一史:植物揮発性成分の植物にとっての生理的意義と人間社会での活用ポテンシャル
悪魔のささやき:気候モデルとイソプレン

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地球温暖化とサンゴのsymbiont shuffling(共生シャッフル)

これまでこのブログではサンゴの白化現象は地球温暖化(=大気中二酸化炭素濃度上昇)とは無関係にエルニーニョ時に起こっておりそのたびにサンゴ礁はしたたかに復活してきたばかりでなく最近では共生藻に耐熱性のあるものを選んでより高水温に耐えられるように変化しているという論文を紹介してきた。(サンゴの白化現象過去200年のサンゴの白化現象とエルニーニョ
しかしながら
2種類以上のクレードを同時に宿しているサンゴは少数しか認められていないことから共生シャッフルの潜在力は限定的であるという見解も依然として根強い。
Mieogらは従来の方法より100倍以上も感度よくSymbiodinium clade C および Dを検出できるreal-time PCR assayにてグレートバリアリーフの11箇所からすでに従来の方法で単一の藻の共生が示されていた482コロニーの再調査を行った。その結果、93%はクレードCに支配されておりそのうちの76%は背景にSymbiodinium clade Dの共生を認めた。このクレードDは慢性的に高水温にさらされている場所や最近に白化現象を起こしたリーフで認められており、現在知られている中では高水温に最も耐性であるという。このことは高水温のストレスがサンゴにクレードDを好ませることを示している。これらの結果から共生シャッフルの潜在能力は今まで考えられていたよりはるかに大きいとMieogらは結論づけている。それでも温暖化教の教義ではどうしても温暖化は人為的でサンゴ礁は「危機」にないとまずいらしい。現在より高い海水温の時代を生き延びてきたサンゴの心配をする温暖化論者や環境活動家はサンゴに対して失礼だと思うのだが・・・・・。

参考論文
Mieog,J.C.et.al.Real-time PCR reveals a high incidence of Symbiodinium clade D at low levels in four scleractinian corals across the Great Barrier Reef: implications for symbiont shufflingCoral Reefs 26:449-457(2007)

参考サイト
The Potential for "Symbiont Shuffling" in Corals

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