「地球温暖化で永久凍土が融解すると強力な温室効果ガスとされるメタンが放出され温暖化がさらに増悪する。」これまたよく耳にする環境活動家や気候警鐘家の「教義」となっているフレーズである。以前にも二酸化炭素濃度の増加と永久凍土の融解が直接結びつかないことを述べたので今さら彼らの「教義」に反論する必要はないのだが、最近Turetskyらの論文のabstractを見つけたのでダメ押しをしておく。とはいってもこの論文は「言語の壁」より「知識のハードル」が高すぎて理解は限定的であるが・・・・。
Turetskyらはカナダ北部の永久凍土が残っている泥炭地の南限で気候変動による永久凍土の融解がどのように影響するかを研究している。彼らは泥炭地を次の三つに分類している。
A:bogs with no surface permafrost(表面に永久凍土のない沼地)
B:localized permafrost features with surface permafrost(表面に限局した永久凍土が存在)
C:internal lawns representing areas of permafrost degradation(永久凍土が融解した地域を代表する内部の草地)
はれほれ注:lawnとは地衣類みたいなものと勝手に想像。internalとは土壌の中またはくぼ地の内側のこと?
彼らはこれらA、B、C三つの土地形態による泥炭の蓄積率の違いを検討し
「正味の有機物の産生はBよりもAやCの方が大きかった。このことは表面の永久凍土は泥炭の蓄積を抑制しており、表面の永久凍土の融解は泥炭地での炭素の蓄積を促進することが示唆される。」
と述べている。さらに下層の性質によって微量ガスの排出に違いがあるかどうか決定するために表層と下層の相互移植実験を行った。その結果は以下のようだった。
「CO2の排出はBの状態で泥炭をインキュベートしたものが最も大きく、メタンの排出は泥炭の種類にかかわらずCの状態が最も高かった。」
今後予測される気候変動つまり気温が上昇すればBの状態からC、さらにAの状態に変化していくとされている。この事を踏まえて彼らは以下のように述べている。
「泥炭地における表面の永久凍土の喪失は泥炭としての炭素の蓄積を増加させ、放射強制力の点からではあるが、増加した大気中へのメタンの排出は部分的にあるいは完全に、永久凍土の分解から少なくとも70年間にわたってこの増強された炭素固定と相殺されるだろう。」
「Cの状態は70年以内にAの状態に変化する。そしてこの状態はメタンの排出が低く、Turetskyらの言う泥炭地での負のフィードバックは長期間持続すると考えられる。」
これでまたひとつ温暖化教の教義がつぶれた。
参考論文
Turetsky, M.R. et. al. The disappearance of relict permafrost in boreal North America: Effects on peatland carbon storage and fluxes. Global Change Biology 13: 1922-1934(2007)
参考サイト
CO2 science:
The Climatic Consequences of Permafrost Degradation in Boreal Peatlands
[2回]
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