Kimballらは長期間にわたる大気中二酸化炭素濃度の上昇が植物の生育にどのような影響を及ぼすのかを検討するため1987年から2005年の17年間にわたってサワーオレンジを育てた結果を2007年に報告している。
サワーオレンジの苗木を二つのグループにわけ片方は今の大気中二酸化炭素濃度で他方は余分に300ppmの二酸化炭素を持続的に付加し、水や肥料は商業果樹園と同様に与えて育成した。最初の2~4年ではバイオマスの生産量(樹木の生長分と果実の収穫)が2.4倍と最も高く、このあといくらかの環境への順応(馴れ)がありその比率は低下したものの最終的に高CO2群がバイオマスの生産で70%高のところで9年間でプラトーに達した。全期間を通じて80%のバイオマス生産の増加が見られた。
またIdsoによると果実の収穫の増加は85%にのぼり、これはほとんど果実数の増加であった。また12年目に収穫された果実のビタミンCの含有量を比較すると高CO2群の方が7%高かった。結局オレンジの生産においては二酸化炭素濃度が高い方が量および質ともに勝っていると結論づけている。
二酸化炭素濃度が高い方が光合成が効率よく行われるという小学生でも直感でわかる当たり前といえば当たり前の結論だが、そのデータを得るのに17年の歳月をかけているのには頭が下がる思いである。適当にデータを入れてスイッチポンであとは機械が勝手に結果を出すコンピューターシミュレーション、いわゆる「instant climatology」とはえらい違いである。それだけにデータの重みが違うといってもよかろう。そしてこの論文にはもうひとつの重要な意義がある。それは温暖化論者の多くが「最初は高濃度CO2で光合成量が増加してもそのうち新環境への馴れが起こって光合成量は元に戻る。」と繰り返し主張してきたことを否定し、70%の生産量増加が持続することを証明したことである。
光合成が専門の渡辺正は初めて二酸化炭素濃度の増加の事実を知ったとき「これで食料問題が解決できる。」と思ったという。私も彼の直感は正しいと思っているが、どうしてもわからない連中が世の中にいるのも事実だ。さてどうしたものか・・・・・・。
[2回]
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COMMENT
納得です!
http://env01.cool.ne.jp/ss02/ss025/komugi.jpg
■ここで紹介されたレポートから、木本においてもこれが実証されたわけですね。
■地質年代的に見ても、現在に比べて大気中の二酸化炭素濃度が数倍であったと考えられる3億年程度前(石炭紀~デボン紀)には巨大シダ類やリンボクが生育し、産業革命を支えた大量の石炭として大気中の二酸化炭素を固定していることからも、生態系の基盤となる植物にとって大気中二酸化炭素濃度の上昇は大変好ましいことに思えます。
■大気中の二酸化炭素濃度が数倍になった程度では人間を含む動物の生存を左右する可能性もありませんから(ビニールハウス栽培では1000ppm程度まで濃度を上げることもあるようですが、これによる健康被害は聞きません。)、総じて生態系にとっても好ましいことだと思います。
■この問題に限らず、二酸化炭素地球温暖化脅威説を信奉する『研究者?』諸君は、二酸化炭素憎しで、何でもかんでも二酸化炭素を悪者にしないときがすまないようです。
■また、環境異変があれば、何の裏付けもなく『やはり二酸化炭素温暖化のせいですかね』とのコメントを繰り返すマスコミの軽薄さには、うんざりです。
Re:納得です!
>■地道な研究に敬意を表したいと思います。拙HPでも1年草(オオムギ)についての実験結果から、現状では大気中の二酸化炭素濃度と光合成速度はほぼ比例関係にあるという実験結果を紹介しました。
★このようなデータは多くありますよね。私も同様のデータはたくさん見たことがあります。ところが、福岡県の農業試験センターだったと思いますが、2,3年前の「地球温暖化」の講演会でものすごく悪いデータを出してました。高CO2では果物が熟れすぎて売り物にならないというような話でした。ちょっと信じ難いデータで「他の施設のデータと全く違うのはどうしてか?」と皮肉まじりに質問をしたのですが・・・・。行政主催の温暖化防止シンポジウムみたいなものでしたからかもしれません。
とにかくこの実験のすごいところは長期にわたったデータで「acclimation」(新環境馴化)が大きくないことを示したことです。
>■地質年代的に見ても、現在に比べて大気中の二酸化炭素濃度が数倍であったと考えられる3億年程度前(石炭紀~デボン紀)には巨大シダ類やリンボクが生育し、産業革命を支えた大量の石炭として大気中の二酸化炭素を固定していることからも、生態系の基盤となる植物にとって大気中二酸化炭素濃度の上昇は大変好ましいことに思えます。
★私も同様に考えています。CO2濃度の上昇はトウモロコシなどの少数のC4植物には不利に働くかもしれませんが、大多数の植物にとっては有利に作用するでしょう。おっしゃるようにこれは生態系にとっても人間にとっても好ましいことです。
>■また、環境異変があれば、何の裏付けもなく『やはり二酸化炭素温暖化のせいですかね』とのコメントを繰り返すマスコミの軽薄さには、うんざりです。
★マスコミだけでなく気象庁もやってますので「地球温暖化により」という枕詞的用法をやめるように春先に抗議の電子メールを送りました。その後はなぜか使っていないようです。(笑)
http://www.jma.go.jp/jma/press/0703/01d/temp0703.html
比較↓
http://www.jma.go.jp/jma/press/0709/03c/tenko070608.html
グラフ
過去千年間の二酸化炭素のグラフです。
http://www.realclimate.org/index.php?p=223
従来のグラフと違い二酸化炭素も、かなり変化しています。
Re:グラフ
>過去千年間の二酸化炭素のグラフです。
>http://www.realclimate.org/index.php?p=223
リンク先を拝見しましたが、どうも違うようです・・・・。私の読解力不足でしょうか?
real climateは温暖化支持派のブログで個人攻撃などなんでもありと例の論文の著者に批判をされていたサイトです。私も好きではありません。科学的な真実を追究するという態度ではなく、「議論に負けない」ことを目標にしている印象です。Ookuboさんはさすがに懐が深いですね。
個人的にはこの2000年程度のCO2濃度の見直しが必須だと思います。IPCC由来のデータをそのまま受け入れるととんでもないことになるのは「気温」が示しているとおりです。
捕捉説明
リンク先の3センテンス目にある(Ruddiman,2003)
という薄い緑の文字をクリックして下さい。
そうすると、PDFファイルがダウンロードされます。
そのPDFファイルの20ページにあるグラフが、興味深いのです。
論文は、「Scientific American」に掲載された論文ですから信頼性は高いです。
著者は、二酸化炭素・原因説を否定しているわけではありませんが、温室効果ガスの発生原因について、従来の説に、懐疑的な研究者です。
Re:捕捉説明
>そのPDFファイルの20ページにあるグラフが、興味深いのです。
まだざっと目を通した程度ですが、この著者は農業とかの人間活動も温室効果ガスの濃度に影響を与え、それが気候を変えていると考えているようです。
「自然の気候変動が温室効果ガスの濃度を変化させているが、このレベルの温室効果ガス濃度の変化による気候への影響はほとんどない。大局的に人間活動の気候に与える影響はごく軽微かもしくはない。」というのが今の私のポジションです。少しスタンスが違うようです。29ページの図では悪名高いホッケースティックが引用されていますね。もう少し腰を据えて読んでみないとなんともいえません。(でも長文です!)
データの中立性
例えば、考古学者・安田喜憲の本は、貴重な情報を提供してくれますが、安田氏の「地球温暖化・危機論」には同意できません。
私のコメントは以上です。今までお付き合いありがとうございました。
氷床コアデータの過信は禁物
>主張や結論が自分と違っている論文でも有用な情報が含まれているなら、読んだ価値があると思います。
おっしゃることは理解できますしその通りですが、私は著者の仮説の根拠自体に疑問を持っています。著者は氷床コアの二酸化炭素濃度の再構築を根拠として自身の仮説を提出していますが、私はそこに全幅の信頼をおくわけにはいかないと考えています。まず氷床の形成年代の分解能がよくありません。(何年前の氷かという推定)それからその氷から抽出された空気が何年前のものかという推定が行われます。これでは誤差が大きくなると思いますし、Jaworowskiなどはこのような方法自体に異議を唱えています。
次に時間軸の幅が大きすぎて、キーリングの連続測定とは質的に同一には扱えません。たとえば御指摘の図でも約500年で5~6個のプロットで、その間隔が100年程度に相当します。極端な話ですが、現在のように年間1~1.5ppmも二酸化炭素濃度が変動するのなら100年の間にその半分の50~75ppmの変動が起こっていることも否定できません。(たとえば同じスピードで上昇して下降するという意味です)有名なドームふじのデータも同じです。過去数十万年前にさかのぼれば2500年程度の間隔です。その間に二酸化炭素濃度の変動が起こっていないという保証はありません。つまりオーバーな話としては測定値と測定値を直線で結ぶことが適切なのか?という疑問です。他にもほとんど解決済みとされていますが、クラックの問題やクラスレート形成の問題なども指摘されています。また1985年以前の論文では結構ばらついた数値がでていたのが、それ以降は産業革命前の二酸化炭素濃度は280ppm以内にきれいにおさまっています。これはとても不思議なことです。掘削や測定技術の進歩もあるとは思いますが、何か不自然な気もしないではありません。生データをきちんと把握できるような立場でなければこの問題にしろうとが口を出す余地はないと思います。
私と主張が違うというのは確かですが、それ以上に仮説の前提としているものに疑問があるというのが最大のポイントです。
>私のコメントは以上です。今までお付き合いありがとうございました。
貴重なご意見ありがとうございました。またOokuboさんのところにも寄らせていただきますのでよろしくお願いします。