注)この項は私の個人的な考えを述べたものです。計算には自信がありますが、考え方が間違っている可能性は否定しません。(笑)
大気からの再放射の解釈に端を発して、地球の熱収支図をめぐる議論がなされている。誰もが一度は見たことがある図だと思うが、基準図として猫田白重のサイトにある
この図を挙げておく。
近藤邦明は「この図の地表面の熱収支はすべて測定または推測可能であり、地表面の『定常状態』を保つためには大気からのbackradiationが必要である。」と主張している。
これに対して私(たぶんGerlichやThimeも)は「熱移動に双方向はあり得ない。この二つはベクトル量として相殺するべきである。」という主張である。しかし大気からのbackradiationはともかく地表面からの放射の測定値はこの熱収支図の数値を支持しているというのが近藤の主張である。そこでそのあたりのことを考察し、苦し紛れ?に次のような例を考えてみた。
【例】質量mの物体A、Bが宇宙空間にある。地球から見てAは速度2vで左から右に等速直線運動をしている。Bも同じ直線上を速度vで同じ方向へ移動している。Aより右方にBがあるとAがBに衝突するのは自明だが、このときエネルギーの移動はどのように記述できるか?
1)物体Aから見た場合
Aは速度vで静止しているBに接近することになる。
衝突後のA、Bの速度をそれぞれva、vbとすると運動量保存の法則から、
mv=mva+mvb ∴v= va+vb・・・・・・・①
エネルギー保存の法則から
0.5mv2=0.5mva2+0.5mvb2
∴v2= va2+vb2・・・・・②
①、②よりvavb=0 よって解は(va=0、vb=v)または(va=v、vb=0)
要するにAが止まってBが同方向に速度vで動き出すか、Bは止まったままでAがそのままの速度を保って動き続けるかということで、現実的なのは前者であろう。その場合の運動エネルギーの移動を見てみると、0.5mv2の運動エネルギーがAからBに移ったことになる。
2)今度は同じ現象を地球から見た場合、上と同様に
2mv+mv= mva+mvb ∴3v= va+vb・・・・・・③
0.5m(2v)2+0.5mv2=0.5mva2+0.5mvb2 ∴5v2= va2+vb2・・・・・④
③、④を解いて(va=v、vb=2v)または(va=2v、vb=v)
これも前者が解としては適である。この時の見かけのエネルギーの移動は
0.5m(2v)2-0.5mv2=1.5mv2
したがってAからBに1.5mv2のエネルギーが移動したように見えることになる。もちろん同じ現象で移動したエネルギーが違うというのはあり得ないのでどちらかが間違いである。
ながながと書いて何が言いたいかというと、同じ現象でも観測系によって移動するエネルギーが違って見えるということである。2)の場合、物体Bが静止しそれにAが速度vで近づいている(AとBが相対速度vで近づきつつある)系に対して地球上の観測者が速度vで逆方向に動いていると考えればいいのではないか?この場合物体Aを基準に見た1)の場合よりA、Bそれぞれに対して観測者自身の運動から0.5mv2ずつの運動エネルギーの上乗せがあり、それで移動したエネルギーがもともとの0.5mv2より多くなっているように見える。つまり(0.5+0.5+0.5)mv2になっていると考えられる。これを一般化し観測者が速度nvで移動しているとき見かけのエネルギー移動は0.5mv2(2n+1)となる。(計算省略)
しかしこれらはあくまでも見かけのエネルギー移動であり、実際はAとBの相対速度だけを問題にすべきである。つまり観測値をそのまま使用したのでは真の値にはならず、物体間の相対的な速度から運動エネルギーを求めなければならないということである。理由はうまく説明できないのだが、この衝突による運動エネルギーの移動を放射に置き換えれば地球の熱収支図においても同様のことが言えるのではないか?地表面に固定した系で見れば地表面から大気へ向かって26 W/m2の放射が行われているだけなのだが、熱の移動の対象物体外で観測するとそれぞれに上乗せされた放射が観測されるのではないか?そこで運動エネルギーと同様に二つの物体の放射を相殺した「相対放射」を考慮することが熱エネルギーの移動を計算するうえで必要なのではなかろうか?
この運動エネルギーと放射の二つの現象の共通点を思いつくままに列挙してみる。
ⅰ)どちらもエネルギーの移動を表す現象であり数学的にはベクトル量として記述できる。(自信はないけど・・・・)
ⅱ)当該物体から見た場合自分のことはわからない。つまり1)の場合Aは自分が速度vで動いているのか、Bが-vで近づいてきているのかA自身には確かめようがない。つまり自分の持っている運動エネルギーを確かめることができない。これと同じことが放射にも言える。A自身が放射を行っているかどうかはA自身にはわからない。このような場合は他の系で測定した値ではなく物体間での相対評価が必要になるのではないか?
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COMMENT
力学的運動と放射現象
計算は省略しますが、衝突後、物体Aの速度はVa=V、物体Bの速度はVb=2Vになります。この時、物体Bの運動エネルギーは2mV^2です。
次に、この同じ物体の運動を衝突前の物体Aと同じ速度2Vで移動するもう一つの慣性座標系②から観察します。衝突前の速度はVa=0、Vb=-Vです。衝突後の速度はVa=-V、Vb=0になります。この時、物体Bの運動エネルギーは0です。
さて、問題はどちらが誤りか?と言うことですが、結論的にはどちらも正解です。違いは、慣性座標系相互の相対的な移動速度の影響です。慣性座標系②における静止とは慣性座標系①において右へ2Vで移動することを意味しています。慣性座標系②で静止している物体Bは、慣性座標系①で静止するまでにはさらに外部に対して2mV^2だけ仕事をする能力(=運動エネルギー)を持っています。
異なる慣性座標系で表された運動であっても、物体の状態が同じである状態を正しく関係付ければ同じ結果を得ることができます。この問題に限れば、どの座標系で問題を見ているのかを観察者が認識しておけば特に問題はないでしょう。
しかし、物体の運動一般についてはそう簡単ではありません。物体の運動においては①観察者の運動が絶対的に把握できないことであり②観察者の運動によって対象となる物体運動の観測値が変化します。それ故、物体の運動は観察者の運動に対する相対的な運動としてしか記述できないという限界が存在します。例題では簡単に慣性座標系であることを前提としましたが、現実的には慣性座標系がどこにあるのかさえ不明です。
しかし、物体の運動のアナロジーで放射現象を解釈するのは誤りです。放射現象の重要な要素である物体の温度は絶対温度として観測可能です。観測者の温度によって対象となる物体の温度の観測値が変化することはありません。物体の運動に例えるならば、慣性座標系どころか絶対静止座標系が定義可能だということです。これは、誰がどのように観測しようと同一の物体の温度は一意的に特定できるということです。自らの位置する環境の温度も特定可能です。放射現象においては、物体の温度が特定できれば、放射強度は一意的(勿論近似的であることは言うまでもありません。また気体ではかなり複雑になるでしょうが・・・。)に定まります。また、実際に放射強度を観測することも可能ですから、これによって物質ごとの射出率を求めてもいるわけです。
Re:力学的運動と放射現象
>■結論的にはどちらも正解です。
★どちらも正解なら、この例を出したこと自体がすでに失敗ですね。残念。(笑)
>■慣性座標系②で静止している物体Bは、慣性座標系①で静止するまでにはさらに外部に対して2mV^2だけ仕事をする能力(=運動エネルギー)を持っています。
★確かに、上のように説明されるとすっきり納得してしまいます。
>■物体の運動においては①観察者の運動が絶対的に把握できないことであり②観察者の運動によって対象となる物体運動の観測値が変化します。それ故、物体の運動は観察者の運動に対する相対的な運動としてしか記述できないという限界が存在します。
>■物体の運動のアナロジーで放射現象を解釈するのは誤りです。放射現象の重要な要素である物体の温度は絶対温度として観測可能です。観測者の温度によって対象となる物体の温度の観測値が変化することはありません。
>■物体の運動に例えるならば、慣性座標系どころか絶対静止座標系が定義可能だということです。これは、誰がどのように観測しようと同一の物体の温度は一意的に特定できる
★確かにおっしゃるとおりです。私もふたつの現象の共通点をずいぶん探したのですが、結局みつかりませんでした。近藤さんの指摘されたこともおぼろげながら「こんな反論が来ると困るな」と覚悟はしておりました。(笑)で、おそらく「放射」を問題にするからだめなんだろうと考えて、次は「熱の移動」について少し勉強してみようと思います。
貴重なご意見ありがとうございました。
地表面の熱収支の解釈
>地表面からの放射の測定値はこの熱収支図の数値を支持している
下の式のようにそのように計算するだけです。
私も地表面の熱収支に違和感があり、検討してきました。
その結果、単純なことに気がついたのです。
すなわち、物理学で、測定材料からの放熱量
=熱伝導+対流+放射であり、
それを地表面の熱収支にあてはめると
45+88=24+5+104 ①
これを変形して、
45=24+5+(104-88)=24+5+16 ②
物理学では②式のようにあらわすのです。
(地球放射=σT4乗ーσT04乗)
T;地表面の温度、T0;周囲温度
http://www.fintech.co.jp/hikaributuri.htm
(ご紹介いただいたサイトに放射の計算式が出ています)
放射伝熱は36%(全伝熱にしめる割合)であり
常温では放射伝熱の割合は小さいという物理学の常識とも合います。放射はメインプレイヤーではないのです。
すなわち、88は、温室効果ではなくて、地表面
と相対する周囲温度(大気、雲など)の放射ということです。
もういちど書きますが、物理学では、放射放熱=104-88=16とあらわし、16が大事な物理量
(放射放熱量)なのです。
Re:地表面の熱収支の解釈
>物理学で、測定材料からの放熱量=熱伝導+対流+放射であり、
>それを地表面の熱収支にあてはめると
>45+88=24+5+104 ①
>これを変形して、
>45=24+5+(104-88)=24+5+16 ②
>物理学では②式のようにあらわすのです。
★私もその考えを支持していますが、近藤さんのご指摘はとして地表面からの放射の実測値は104に近いということです。したがって、この辺の式の意義や考え方をきちんと説明できないと近藤さんを納得させることはできないと思います。そこを目指してたとえ話として運動を持ち出したのですが、またしても撃沈でした。(笑)
>放射伝熱は36%(全伝熱にしめる割合)であり
>常温では放射伝熱の割合は小さいという物理学の常識とも合います。
>放射はメインプレイヤーではないのです。
★私も少なくとも大気についてはそのように考えていますが、実際に「地表面放射は黒体放射に近似できるくらいの強度がある」という測定結果がある以上、そこを説明しないといけません。さらにそれゆえ、熱収支図を「定常状態」にするために下向きの放射を想定しなければならないというのが、近藤さんの主張です。
>88は、温室効果ではなくて、地表面
>と相対する周囲温度(大気、雲など)の放射ということです。
★大気、雲の放射=温室効果と思いますが・・・・?
>物理学では、放射放熱=104-88=16とあらわし、16が大事な物理量
>(放射放熱量)なのです。
★放射だけでなく「放射放熱量」という定義があるのでしょうか?確かに「これがふたつの物体間の放射による熱の移動を表す」みたいな定義があれば、うまく説明できますね。
あら、そういえば104-88=16ですね。私はあちこちで26と書いておりました。あっちゃー。冒頭には「計算には自信がある」と書いていますが、単純な引き算もできないとは・・・・・面目ない。(笑)
正誤その1
間違いを指摘していきます。
誤-1
1)物体Aから見た場合
Aは速度Vで静止しているBに接近することになる。
正解
1)物体Aから見た場合=静止しているのはA
Bは速度Vで静止しているAに右から左に接近することになる。
⇒ 運動量保存則より、Va=-V、Vb=0
or
1)物体Bから見た場合=静止しているのはB
Aは速度Vで静止しているBに左から右に接近することになる。
⇒ 運動量保存則より、Va=0、Vb=V
誤-2
同じ現象で移動したエネルギーが違うというのは
あり得ないのでどちらかが間違いである。
正解
慣性系(=加速度0の系)という概念を整理しましょう。
どの座標系を基準(速度=0)とするかで、
慣性系は無限に定義できます。
物理学では、「古典力学の法則は、あらゆる慣性系で不変」
としか述べていません。つまり、慣性系であれば、どの慣性系に対しても、
古典力学の法則が適用できるとしか述べていないのです。
「同じ現象であっても、どの慣性系で観測するかで、
移動したエネルギーは変わる」訳です。
物理学では、各慣性系内で、エネルギー保存則、
運動量保存則が成立する以上のこと・・・つまり、
異なる慣性系間のエネルギー、運動量については言及していません。
はれほれさんは、「物体Aから見た場合」と「地球から見た場合」として、
それぞれの慣性系において、
古典力学の法則(運動量保存則、エネルギー保存則)を適用しており、
その限りで、どちらの結果も正しいのです。
「同じ現象で移動したエネルギーが違うというのは、
慣性系が異なれば当然あり得る」訳です。
誤-3
見かけのエネルギー移動であり、
実際はAとBの相対速度だけを問題にすべきである。
つまり観測値をそのまま使用したのでは真の値にはならず、
物体間の相対的な速度から運動エネルギーを
求めなければならないということである。
正誤その2
どの慣性系も古典物理学の法則が適用できる、という意味で、全くの同格です。
計算しやすいか、しにくいかの違いはあっても、特別な慣性系などないのです。
慣性系ごとにAとBの速度は変わる一方で、
AとBの相対速度は変わらない訳ですが、
だからといって、"真の" エネルギー移動がある訳ではありません。
どれも正しいエネルギー移動なのです。見かけのエネルギー移動の中でも、
「物体B(or A)から見た場合」、つまり、
基準となる慣性系をどちらかの物体とした方が、
物体間の相対速度を扱うだけ済むので、
計算が楽だというだけのことなのです。
肝心なのは、どの慣性系で観測した結果なのかを明示することなのです。
参考)
ⅰ)どちらもエネルギーの移動を表す現象であり数学的にはベクトル量として記述できる。
正しいですよ。エネルギーそのものは、スカラー量(方向性なし)ですが、
運動エネルギーには、放射エネルギーにも、ベクトル量(運動量)があります。
光には、質量はない(m=0)ですが、運動量はあります。
誤-4
当該物体から見た場合自分のことはわからない。
つまり1)の場合Aは自分が速度Vで動いているのか、
Bが-Vで近づいてきているのかA自身には確かめようがない。
つまり自分の持っている運動エネルギーを確かめることができない。
正解
当該物体から見た場合、つまり1)の場合、
「Bが-Vで近づいてきている」が正解。
それが、"当該物体から見た" という条件の定義・・・
速度=0の基準を物体Aとする、ということの解釈です。
"Aは自分が速度Vで動いている" というのは、
どの座標系に対して動いているかを考えて見てください。
当然、「物体Bから見た場合」に限定されます。
cf「A自身には確かめようがない」というのではなく、
どちらの慣性系も同格で、どちらも特別でない以上、
どちらの慣性系を基準にとっても問題はない、ということです。
誤-5
熱の移動の対象物体外で観測すると
それぞれに上乗せされた放射が観測されるのではないか?
正解
運動エネルギーと放射エネルギーは、エネルギーという観点では同じですが、
どの慣性系を基準とするかで変化する速度、すなわち、運動エネルギーとは対照的に、
放射エネルギーは、どの慣性系を基準にしても同一(光速一定 at ∀慣性系)で、
上乗せされた放射など存在しません。
コメント
私はこんな風に感じました。放射に関しては、
地球大気圏外における地球放射スペクトルから評価する他ないだろう。
(それですら、解釈に幅があるのが最大の問題点)
http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/dd/Atmospheric_Transmission_JA.png
シュテファン・ボルツマン則は、放射スペクトルの強度の積分値から、
温度を見積もる上で便利な法則ですけど、地球≠黒体である以上、
吸収帯(太陽におけるフラウンホーファー線)の評価次第で
変わっちゃうと思うんです。プランクの黒体放射式にしたところで、
地球表面温度(平均値)の近似値には、
210~310Kでフィッティング可能となる以上、
目安という意味以上のものを求めてもしようがないのではないでしょうか?
対流圏における放射の評価に関しては、
地球大気圏外における地球放射スペクトルの評価以上に困難がある訳ですが、
それは、はれほれさんの仰る「相対放射」によるものではなく、
対流圏における放射スペクトルの帰属の難しさにあると思うのです。
ベクトル的な評価(鉛直上向きか下向きか)で評価できるものだとは、
とても思えません。
最も頼りになる地球大気圏外における地球放射スペクトルですら、
評価が分かれることが、ネックなのではないでしょうか?
> ここが、わかりません。(笑)私は吸収は位相など関係なく
> 光が電子に衝突すれば起こる現象と思い込んでいたのですが
熱放射の位相に関係なく行なわれる放射
= 自然放射(熱放射が存在する時にも起こります)
それ以外の放射として、誘導放射がある訳です。
熱放射の光子の位相と無関係な放射過程 ⇒ 自然放射
熱放射の光子の位相と一致した放射過程 ⇒ 誘導放射
> 吸収は位相など関係なく
どころか、熱放射の光子の位相と一致して始めて起こる過程です。
光子1個が吸収される = 当該光子と逆位相の光子が放射される ですから、
位相と関係のない吸収過程など存在しません。(波の式:同位相+逆位相=0)
相対運動の考え方を(誘導)吸収と誘導放射に適用されては如何です?
Re:コメント
>どの座標系を基準(速度=0)とするかで、慣性系は無限に定義できます。
>"当該物体から見た" という条件の定義・・・ 速度=0の基準を物体Aとする、
>ということの解釈です。
★なるほど、私は座標の原点を決めることが、座標を決めることと考えていました。それが、ご指摘の誤-4の原因ですね。
>「同じ現象であっても、どの慣性系で観測するかで、
>移動したエネルギーは変わる」訳です。
>物理学では、各慣性系内で、エネルギー保存則、
>運動量保存則が成立する以上のこと・・・つまり、
>異なる慣性系間のエネルギー、運動量については言及していません。
>「同じ現象で移動したエネルギーが違うというのは、
>慣性系が異なれば当然あり得る」訳です。
★これが、近藤さんの言われる「どちらも正解」がなぜ成立するかの理由ですね。
>特別な慣性系などないのです。慣性系ごとにAとBの速度は変わる一方で、
>AとBの相対速度は変わらない訳ですが、だからといって、
>"真の" エネルギー移動がある訳ではありません。
★私は相対速度による移動が「真」と考えていました・・・・・・。それが間違いでした。
>肝心なのは、どの慣性系で観測した結果なのかを明示することなのです。
★ここは近藤さんの「異なる慣性座標系で表された運動であっても、物体の状態が同じである状態を正しく関係付ければ同じ結果を得ることができます。この問題に限れば、どの座標系で問題を見ているのかを観察者が認識しておけば特に問題はないでしょう。」と同意ですね。よくわかりました。
>エネルギーそのものは、スカラー量(方向性なし)ですが、
>運動エネルギーにも、放射エネルギーにも、ベクトル量(運動量)があります。
>光には、質量はない(m=0)ですが、運動量はあります。
★ すいません、自分で言っていて恐縮ですが、普通に運動量とは質量(スカラー)x速度(ベクトル)という意味で使っていました。光の場合、質量=0でも運動量があるというのはどう考えるのでしょうか?
>運動エネルギーと放射エネルギーは、エネルギーという観点では同じですが、
>どの慣性系を基準とするかで変化する速度、すなわち、運動エネルギーとは対照的に、
>放射エネルギーは、どの慣性系を基準にしても同一(光速一定 at ∀慣性系)で、
>上乗せされた放射など存在しません。
★確かにおっしゃるとおりです。光速は一定でした。でも光の運動量をどうやって決めるのか知っていないとここまでたどりつけないような気がしますが・・・・。ちょっと調べたら(光速)x(プランク定数)÷(波長)となっていますが、これでディメンジョンは・・・確かにあってますね。
>地球大気圏外における地球放射スペクトルから評価する他ないだろう。
>地球≠黒体である以上、吸収帯(太陽におけるフラウンホーファー線)の評価次第
>地球表面温度(平均値)の近似値には、 210~310Kでフィッティング可能
>目安という意味以上のものを求めてもしようがないのではないでしょうか?
★私が不思議に思うのは、紹介いただいたサイトもそうですがほとんどの放射のグラフに縦軸のスケールが明記されていないことです。ウィーンの法則などから、ピーク波長での強度を比べることによって本当に何度の黒体に近似できるのかどうかということを確認しようがないと思います。申し訳程度に○○Kの黒体という漫画チックな図が挿入してある程度です。私ならずとも「本当かいな?」と思う人がいると思うのですが・・・。
>対流圏における放射の評価に関しては、
>地球大気圏外における地球放射スペクトルの評価以上に困難がある訳ですが、
>それは、はれほれさんの仰る「相対放射」によるものではなく、
>対流圏における放射スペクトルの帰属の難しさにあると思うのです。
>ベクトル的な評価(鉛直上向きか下向きか)で評価できるものだとは、
>とても思えません。
★つまりどの物質からの放射なのかわからないということですね。確かに放射はすべての向きに行われるということになっていますので、高い山などがあれば平地からみれば地表面の放射が下向きにやってくることがあってもおかしくないような気がします。
>熱放射の光子の位相と無関係な放射過程 ⇒ 自然放射
>熱放射の光子の位相と一致した放射過程 ⇒ 誘導放射
★ここまではわかります。
>熱放射の光子の位相と一致して始めて起こる過程です。
>光子1個が吸収される = 当該光子と逆位相の光子が放射される
★残念ながらここは理解できません。光を理解することはどうやら私には一生無理なようです。(笑)
私の誤記(正誤その2)
誤) 見かけのエネルギー移動 ⇒ 正)各慣性系におけるエネルギー移動
誤) 運動エネルギーには、放射エネルギーにも
⇒ 正)運動エネルギーにも、放射エネルギーにも
失礼しました。
コメント
古典力学では、2m・E=p^2 と、エネルギーEと運動量pは、
質量mを介して表わされます。ところで、古典力学は、
時間、空間(座標)を、独立変数(基準)として構成されています。
はれほれさんは、古典力学(ニュートン力学)の知識のみを前提にしている訳です。
アインシュタインは、鏡に映る自分の顔を見て、光速で鏡が動くとき、
鏡に映る自分の顔はどうなるのだろう・・・と考え、思考実験を繰り返し、
古典力学の前提であった、時間と空間の独立性を棄却し、
あらゆる慣性系で光速一定という新しい前提の下で、力学を構成し直し、
時間と空間の非独立性(古典力学の欠陥)を示しました。
運動量とエネルギーの関係は、特殊相対論では、E^2=p^2・c^2+m^2・c^4
となります。時間・空間に変わって、新しく基準となった光は、
m=0 ⇒ E=p・c という訳です。
さらに、古典力学の概念(粒子≠波動)を打ち破る端緒として、
高校の物理(量子論)で習うのが、光の粒子性と波動性です。
光の粒子性=エネルギー(E=hν)、運動量(p=h/λ)
光の波動性=干渉性(≠粒子的な衝突)
> 放射のグラフに縦軸のスケールが明記されていない
強度(Intensity)に単位がない(A.U.=arbitrary unit)のは
少し考えれば分かりますよ。
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E3%82%B7%E3%83%A5%E3%83%86%E3%83%95%E3%82%A1%E3%83%B3%EF%BC%9D%E3%83%9C%E3%83%AB%E3%83%84%E3%83%9E%E3%83%B3%E3%81%AE%E6%B3%95%E5%89%87]
シュテファン=ボルツマンの法則
強度(Intensity)の次元は、W/m^2 = J/(s・m^2) です。
つまり、単位時間(s=second)、単位面積(m^2)あたりのエネルギー(J)です。
コメント(つづき)
エネルギー(J)ではなく、試料と検出器(露光時間など光学部品の性能)の条件で決まる、
ある時間、ある面積あたりのエネルギーです。
その意味で、任意単位(A.U.=arbitrary unit)って呼ばれています。
では、どうして単位時間(s)、単位面積(m^2)に換算しないのか?
という疑問が湧きますが、
スペクトル構造、つまり、光強度と波長(振動数)の相関関係は、
露光時間を変えてみたり、集光する試料の面積を変えたりしても、
全体のスペクトル構造が、変わらなければ問題ない、と補償的に解釈してる訳です。
シュテファン=ボルツマンの法則では、光強度の積分値が対象ですから、
上記のような相対強度ではなく、絶対的光強度(W/m^2)が求められている訳ですが、
熱放射のスペクトル構造は一意的(プランクの放射式)なので、
相対強度でもフィッティングできる以上、問題ない、ということです。
> 光を理解することはどうやら私には一生無理なようです。(笑)
位相θのn個の光子
n・exp(iθ)⇒(n-1)exp(iθ) 光子1個が吸収される
n・exp(iθ)+exp{i(θ+π)} 当該光子と逆位相の光子が1個放射される
=n・exp(iθ)-exp(iθ)=(n-1)exp(iθ)
⇔ 光子の吸収≡当該光子と逆位相の光子の放射
光子の吸収とは、逆位相(π)の光子の放射と同値という訳です。
ある位相の光子の吸収=ある位相の光子と逆位相(π)の光子の放射
=熱放射の位相に"誘導" された吸収
> 吸収は位相など関係なく
は、間違っていることが伝わったでしょうか?
Re:コメント(つづき)
>古典力学は、時間、空間(座標)を、独立変数(基準)として構成されています。
>時間と空間の独立性を棄却し、
>あらゆる慣性系で光速一定という新しい前提の下で、力学を構成し直し、
>時間と空間の非独立性(古典力学の欠陥)を示しました。
★へぇー、そういう考え方ははじめてです。なるほどです。
>運動量とエネルギーの関係は、特殊相対論では、E^2=p^2・c^2+m^2・c^4
>となります。時間・空間に変わって、新しく基準となった光は、
>m=0 ⇒ E=p・c という訳です。
私は単純に
E=hc/λ=mc2
から、m=h/(λc)
としましたが・・・・。どちらも基本的な数式だと思いますが、いかがでしょうか?答えは同じでも考え方の手順が違う?この(E^2=p^2・c^2+m^2・c^4)式は定義なのでしょうか?それともどこからか導かれるものでしょうか?
>高校の物理(量子論)で習うのが、光の粒子性と波動性です。
>光の粒子性=エネルギー(E=hν)、運動量(p=h/λ)
>光の波動性=干渉性(≠粒子的な衝突)
★今は高校でそんなことを習うのですか?昔の高校生でよかった。(笑)
>実際のデータは、単位時間(s)、単位面積(m^2)あたりの
>エネルギー(J)ではなく、試料と検出器(露光時間など光学部品の性能)
>の条件で決まる、ある時間、ある面積あたりのエネルギーです。
>その意味で、任意単位(A.U.=arbitrary unit)って呼ばれています。
★単位については理解していますが、「任意単位」は初めて聞く言葉です。
>スペクトル構造、つまり、光強度と波長(振動数)の相関関係は、
>露光時間を変えてみたり、集光する試料の面積を変えたりしても、
>全体のスペクトル構造が、変わらなければ問題ない
★おっしゃることは理解できますが、波長ごとの射出率を細かにみようとすると、ほとんど測定値にそって「○○Kの黒体」というラインが引いてあり、(射出率が1になっている)本当かいな?といつも思っています。実際に○○Kの黒体の放射強度をその距離から測定して確認を取っているとは思えません。ここが、いまひとつ納得できないところです。
>位相θのn個の光子
>n・exp(iθ)⇒(n-1)exp(iθ) 光子1個が吸収される
>n・exp(iθ)+exp{i(θ+π)} 当該光子と逆位相の光子が1個放射される
> =n・exp(iθ)-exp(iθ)=(n-1)exp(iθ)
> ⇔ 光子の吸収≡当該光子と逆位相の光子の放射
>光子の吸収とは、逆位相(π)の光子の放射と同値という訳です。
★丁寧な解説恐れ入ります。exp(iπ)=-1 ですね。式の上からは理解できたと思います。
>ある位相の光子の吸収=ある位相の光子と逆位相(π)の光子の放射
> =熱放射の位相に誘導された吸収
>> 吸収は位相など関係なく
>は、間違っていることが伝わったでしょうか?
★三つのうち前二者の関係はわかりましたが、三番目と一番目は無条件に等しいということでしょうか?わかったようなわからないような・・・・・。(笑)それでもおかげさまで少しずつ賢くなっているような気がします。たぶん気がするだけでしょうけど。(笑)
放射伝熱量
そうですね。下向きの大気放射ですね。
>放射だけでなく「放射放熱量」という定義があるのでしょうか?
地表面からの放熱なので、放射放熱量といっただけです。
放射伝熱量は下記のように教科書では定義されています。
放射伝熱量(q12)=(面1から発散し、面2に到達して吸収される熱量)ー(面2から発散し、面1に到達して吸収される熱量)=ε1*F12*σT14乗ーε2*F21*σT24乗
(F12、F21は形態係数)
(T1>T2なら熱は1から2に流れる。面1の放熱)
雲があると放射冷却が緩和されるのも、この式を適用すればうなずけますね。(雲があると下向きの大気放射が増えるため、差として地表面からの放熱が減少。)
Re:放射伝熱量
>放射伝熱量は下記のように教科書では定義されています。
>放射伝熱量(q12)=(面1から発散し、面2に到達して吸収される熱量)-(面2から発>散し、面1に到達して吸収される熱量)=ε1*F12*σT14乗-ε2*F21*σT24乗
>(F12、F21は形態係数)
>(T1>T2なら熱は1から2に流れる。面1の放熱)
私もこの考えに賛成です。ε1は射出率ですね。この式は正味の熱移動量を表しています。なぜ例の熱収支図でこう表記しないのか不思議ですよね。
こんばんわ(笑)その1
光の質量 m=0 ですから、これはマズイです。
m≠0ってことは、光速になれないことを意味してもいるんですよ。
> 波長ごとの射出率を細かにみようとすると、
> ほとんど測定値にそって「○○Kの黒体」というラインが引いてあり、
> (射出率が1になっている)本当かいな?といつも思っています。
射出率が1の意味が、放射確率=1なら間違ってますよ。
理論値(○○Kの黒体放射、熱放射)でフィッティングした当該スペクトルの評価として、
理論値と一致する波長 ⇒ ○○Kの熱平衡状態とみなせる
≡ 当該波長の光の放射数密度=当該波長の光の吸収数密度
つまり、放射数密度=吸収数密度(熱放射の定義) であって、それ以上ではありません。
http://akumanosasayaki.blog.shinobi.jp/Entry/32/
沈思黙考 2008/08/01(Fri)03:21:44
放射確率=1 とは、励起状態からの緩和過程として、無放射失括(例えば、振動緩和)や
他の光化学反応(分子内もしくは分子間での電子移動)など、
放射以外のすべての緩和過程が起こらない、という非常に特別なケースです。
入力したエネルギー(この場合、光)すべてが、光となって出力される訳です。
地球大気が対象であれば、そんな気体分子はありません。
はれほれさんが、どういったデータを参照されて疑問に思ったのかは、わかりませんが、
はれほれさんの疑問は妥当だと思いますよ。
> 三番目と一番目は無条件に等しいということでしょうか?
はい。
> 式の上からは理解できた
のであれば、あとは急がずに考え抜くことです。
誘導放射=ある位相の光子と同位相(0)の光子の放射
誘導吸収=ある位相の光子と逆位相(π)の光子の放射
=吸収
誘導放射が、熱放射の位相に誘導されている(⇒同位相)と解釈できるにもかかわらず、
吸収(=誘導吸収)が熱放射の位相に誘導されていないと解釈するのは、
はれほれさんの先入観の強さゆえだと思います。
同位相(0)の光子の放射が "誘導" だと理解できて、
逆位相(π≠ランダムな位相)の光子の放射が "誘導" だと理解できないのは、残念ですね。
こんばんわ(笑)その2
物理をモノにしようと懸命になっていた頃を思い出しました。
お仕事の傍らですから当然のことですが、相対論や量子論の基本に関して、
コメント欄で悟ってもらうのは、難しいようだと反省している次第です。
私の子供が抽象思考できるようになる頃までには、
物理や化学の教科書における難所や哲学に対する私の考え方を
HPにしてみようと思っております。
その際、教科書を傍らにおいて、吟味する一つの理想が、
EMANの物理学
http://homepage2.nifty.com/eman/
です。レベルは高いですが、通り一遍のありきたりの説明に終始することなく、
著者の肉声を感じることができた数少ない物理学の解説ページだったので、
採り上げた次第です。完成の折には、冷やかしがてら覗いてみてください(笑)。
Re:こんばんわ(笑)その2
>光の質量 m=0 ですから、これはマズイです。
>m≠0ってことは、光速になれないことを意味してもいるんですよ。
★やっぱり、違いましたか。(笑)どうも話が単純すぎると思いました。(笑)
>射出率が1の意味が、放射確率=1なら間違ってますよ。
★これは単に波長別の放射強度を黒体と比較したときの強さという意味です。
>放射確率=1 とは、励起状態からの緩和過程として、無放射失括(例えば、振動緩和)
>や 他の光化学反応(分子内もしくは分子間での電子移動)など、
>放射以外のすべての緩和過程が起こらない、という非常に特別なケースです。
★すべてが、再放射されるということですね。わかりました。
>はれほれさんの疑問は妥当だと思いますよ。
★いやいや、TheorySurgery氏が最近寝返りまして(笑)だんだんわけがわからなくなってきています。(笑)
http://feliscatus.blog77.fc2.com/blog-entry-82.html
ただ、リンク先が開けないので現時点では私の判断は保留です。中田宗隆氏のご意見を伺ってみたいのですが、最近「現代化学」には何かコメントされていないでしょうか?
>はれほれさんの先入観の強さゆえだと思います。
★そうですね。この年齢になりますと、先入観と偏見の塊かもしれません。(笑)自分ではそんなつもりはないのですが、知らず知らずのうちに自分のそれまでの経験に縛られているようです。趣味の将棋ではそういう経験的なものが「読みを進める」うえで重要なウエイトを占めています。「ここはこうやるものだ。」みたいな選択です。それで9割以上は正解なのですが、たまに自分の経験が通用しない場合があるのも事実です。羽生善治氏のすごいところは40前にもなってまだ経験(先入観)に縛られずに自由な発想で盤上の真理を追求できるところだと思います。とても凡人にはまねのできないところです。まあ、この年になると自分の能力の限界も見えてくるのも事実ですので・・・・あせらずゆっくりですね。
>EMANの物理学
サイトの紹介ありがとうございました。なかなか面白いですね。これからも参考にしようと思います。