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悪魔のささやき

気象予報士の視点から科学的に捉えた地球温暖化問題の真相を追究。 地球温暖化を信じて疑わないあなたの耳元に聞こえる悪魔のささやき。それでもあなたは温暖化信者でいられるか?温暖化対策は税金の無駄遣い。即刻中止を!!! Stop"Stop the global warming."!!

   

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暁新世・始新世温度極大期;5.ミランコビッチサイクルと気候変化

    LourensはWalvis Ridgeの堆積コアから第1の温暖化イベントPETMと第2の温暖化イベントETM2の時間間隔が約200万年であることをつきとめ、「堆積物のmagnetic susceptibility(磁化率)などの検討により両者ともに225万年の離心率周期の長期間に及んだ最小期の直後に起こった40.5万年と10万年の周期の最大期に一致して起こっていることを示している。」としてミランコビッチサイクルと地球の気候変化の関連について言及している。(暁新世・始新世温度極大期;3.繰り返す温暖化イベント参照)少し詳しく解説すると離心率には独立して変化する長周期約40.5万年と短周期約10万年がある。したがって二つの周期の最小公倍数、225万年に一度極端に離心率が大きくなり、地球の軌道は一番扁平なだ円となる。太陽はだ円の中心ではなく二つの焦点のひとつにあるので近日点と遠日点での太陽-地球間の距離の差が大きくなり、近日点では太陽から受ける日射が大きくなる。(距離の2乗に反比例)さらにWesterholdは「(温暖化イベントは)10万年と40.5万年周期の離心率周期によって調節された歳差運動の周期によって支配されている。PETMもETM2も10万年周期の最大離心率の時期に関連して起こっている。両者ともに40.5万年周期の最大離心率期の前後4分の1の時期に起こっておりPETMは最大離心率より遅れ、ETM2は先立って起こっている。」と述べている。これは短周期の10万年周期と長周期の40.5万年では短周期の方が最大離心率から数万年の違いで大きくずれてしまう。たとえば5万年のずれで短周期では離心率はかなり小さくなるが、長周期においてはその程度のずれでは離心率は最大値とあまり変わらないということである。したがって「10万年周期の最大離心率で40.5万年の最大離心率付近」というのはかなり離心率が大きな時期と考えられる。また「(40.5万年周期の最大離心率期より」PETMは最大離心率より4分の1周期遅れ、ETM2は先立って起こっている。」ということで最大離心率周期225万年より前後で約10万年ずつ二つの温暖化イベントの間隔は短いことになる。それが「約200万年の間隔」という意味だ。その前後の差を決めるのがおそらく歳差運動であろうと推定される。つまり離心率が大きな時期の近日点で北半球高緯度に大きな日射が入る地軸の傾きの場合に温暖化イベントが起こりやすいと考えられているからだ。それがSluijsのいう「ETM2は歳差運動と密接な関連がある」ということである。5000万年前のミランコビッチサイクルの推定誤差は2万年程度とされており、約2万年の歳差運動周期はほとんど誤差に含まれ計算による特定は困難であるが、X-ray fluorescence scanning(XRF)という方法が歳差運動を推定する手掛かりとなっている。
 ここで直近100万年の氷期間氷期サイクルに目を移すと、2007年のKawamuraらの有名な論文がある。氷床にトラップされた大気のうち酸素分子が窒素分子に比べて日射によって散逸しやすいというBenderによる指摘を利用してO2/N2比が局所の日射のマーカーとなりうることを示し、Vostok基地とドームふじの氷床コア分析結果とミランコビッチサイクルの関係を過去36万年にわたって精度よく再構築した。その結果軌道スケールでの南極の気候変化は北半球の日射に数千年遅れ、直近4回のterminationでは南極の気温と大気中二酸化炭素の増加は北半球の夏季日射の増加時期に起こっていることを示している。つまりミランコビッチサイクルによる北半球の温暖化が氷期の終わりとCO2濃度の上昇を引き起こしたことになる。(CO2が上昇して氷期を終わらせたわけではない!!)この論文はIPCC4次報告にぎりぎり間に合うタイミングでpublishされており注1、このことはIPCCもしぶしぶ(?)認めている。たとえば気象庁訳
 またobliquity(地軸の傾き)の重要性についても新しい知見が出ている。Obliquityは4.1万年周期で22.1°から24.5°まで変化している。現在の傾きは23.5°で今後これは小さくなる方向へ変化している。従来はobliquityが大きくなると季節により極端な気候になる(夏暑く、冬寒い)といわれるだけであまり重視されていなかったが、Drysdaleらは最終氷期から2番目の氷期のtermination(terminationⅡ;141,000 ± 2500年前)の開始にこのobliquityが重要な働きをしていると主張している。彼らは歳差運動によって北半球高緯度(65°N)の夏季日射が大きくなるよりも早く氷床の融解が始まっており、これはobliquityの変化によるものであるとしている。さらに最終氷期のtermination(terminationⅠ)もterminationⅡと3つのobliquity周期を隔てた同一のフェイズで始まっていると指摘している。すなわち両者は周期41,000 x 3=123,000年の間隔で起こっている。リンク先のアブストラクトにはどういうフェイズで起こったかについては触れられていないが、ウィキペディアのグラフを見ると両者とも地軸の傾きが極小値から増大していく時期に一致している。やはりこれも北半球高緯度の夏季日射の増加につながる軌道変化である。
 なぜ北半球高緯度の日射が重視されるのであろうか?氷期間氷期サイクルの場合はアイス・アルベド効果を考えればそれなりに納得できるのだが、PETMにおいてはSluijsが再三述べているようにPETM前の北極海のsea surface temperature(SST)は17℃前後でありアイスフリーであったと考えられている。とてもそのような正のフィードバックが起こる状況ではなかったはずだ。ただPETM時にも温度上昇に伴って海水準の上昇は認められており、高山などには少量の氷床が存在した可能性が高い。これもPETMの謎のひとつである。さらにSluijsによると、このような高緯度と低緯度のSSTの差が小さい海洋環境というのはたとえ当時の海陸分布をインプットしたとしても現在の気候モデルでは全く再現できないということである。気候モデルがいかに現在の状態にadjustされた不完全なものかということを物語るひとつの証拠である。自然現象を物理法則に従ってきちんと再現しているのならPETM時代の地球を再現できるはずだ。できないということはそれ自体が欠陥品であるということである。
  昨年10月カナダで行われた2008 Gussow-Nuna Geoscience ConferenceにおいてSluijsがゲストスピーカーとしてしゃべっている。私は残念ながら参加できなかったのだが、このサイトから彼の講演にアクセスできる。世界的な研究者の生の声に触れることができる貴重な機会であるので興味のある方はぜひ聞いてみてほしい。
  現在でもミランコビッチサイクルの条件が揃えばPETMのような温暖化イベントが起こりうるのだろうか?あるいは、当時は特別な条件だったから起こりえたのか?それならその条件が揃えば他の時代にもPETM-likeイベントは存在したのだろうか?こうして疑問はどんどん大きくなっていく・・・・・・・。(続く、予定)

注1:この論文はIPCCの四次報告には間に合っていないようです。失礼しました。(2009年10月17日)

参考論文
 
 
 
 
 
 
Bender,M.L.Orbital tuning chronology for the Vostok climate record supported by trapped gas composition. Earth and Planetary Science Letters.202:pp275-289(2002)
 
Drysdale, R. N. et al. Evidence for Obliquity Forcing of Glacial Termination II.Science  325. pp. 1527 – 1531(2009)
 
 
 
参考サイト
 
IPCC第四次報告気象庁訳第6章古気候
 
ウィキペディア:完新世の気候最温暖期
 
 

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