拙ブログの「永久凍土の融解」のコメント欄に論文著者自ら「地盤工学会誌の論文、『温暖化への永久凍土の応答』を読むように」と教えていただいた。早速こちらよりアクセスしてバックナンバーを取り寄せた。(雑誌1600円+送料400円)以下一応のブログ主のまとめである。ただし明らかなミスプリントなどは勝手に解釈して変更しているのであくまでも文責はブログ主にある。
永久凍土は東シベリアでは深く、西シベリアでは浅い。これは東シベリアでは最終氷期から深い凍土が形成されていたのに対して、西シベリアは最終氷期に2000mを超える厚い氷床に覆われており基底部の温度が0℃以下にならず氷床溶解後に凍土の形成が始まったためである。また永久凍土の深さは気温の変動にはただちに応答せず、気温が‐10℃から一瞬で0℃に上昇したとしても永久凍土全層が融解するには1000年かかるというモデル計算もある。したがって現在進行している温暖化が短期間に永久凍土の垂直分布に影響を与えることは考えにくい。
永久凍土表層は夏季に表面が融解し冬季に再凍結する。これを活動層と呼ぶ。この活動層が現在の温暖化で深くなるかどうかをCircumpolar Active Layer Monitoring(CALM)で調査しているが選択された131地点では気温の上昇にもかかわらず過去10年間で活動層が深くなった事例は報告されていない。凍結層が水を浸透させないため活動層の底面に水がたまり高含水比層が形成される。現在の夏季積算温度では潜熱発生分を考慮するとこの層を融解することはない。
永久凍土に森林火災が起こると直達日射量の増加、表層の熱伝導率の低い有機物質の消失、焼け跡のアルベド減少などにより一気に活動層が深くなる。この時あまりにも活動層が深くなると冬季の低温では再凍結せずタリクと呼ばれる凍土内融解層が残存することになる。高含水比層がなくなると水の過剰供給と地盤沈下により火災跡地は沼沢化、拡大しサーモカルストを形成する。
北極海沿岸ではエドマと呼ばれる地下氷を含む永久凍土層が高さ数十mの海岸段丘として露出している。浸食後退は夏季の融解と強い沿岸流によって起こる。温暖化によって海氷が接岸する期間が短くなると沿岸流による浸食作用が大きくなる。(間接的影響)北極域では過去1万年にわたって沿岸浸食が起こっており、これによっていくつかの島が消失した。
以上。まとめここまで。この地盤工学会誌2009年4月号は「特集、地球温暖化と異常気象」となっており温暖化関連の論文が5本掲載されていて、福田の論文はその中のひとつである。他の論文の多く(4分の3)が最初にIPCC4次報告を論拠として温暖化を述べているのに対して福田の論文は北極圏が近年温暖化しているという観測的な事実から本題に入っている。またメディアによる間違った報道を指摘し(永久凍土の大規模融解の報道、アラスカ北東部での大規模海岸浸食による家屋の倒壊を温暖化による永久凍土の融解とする報道)他の論文とは一線を画した内容になっている。結局気温が少々上昇しても永久凍土の応答は遅く、活動層底面に高含水比層が存在するため大規模な永久凍土の融解は起こらない。それよりも山火事などが重大な影響を及ぼしているということである。今までここで紹介してきた論文と同様の結論である。メタンによるポジティブフィードバックなど所詮は温暖化論者の妄想である。
参考論文
[4回]
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