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悪魔のささやき

気象予報士の視点から科学的に捉えた地球温暖化問題の真相を追究。 地球温暖化を信じて疑わないあなたの耳元に聞こえる悪魔のささやき。それでもあなたは温暖化信者でいられるか?温暖化対策は税金の無駄遣い。即刻中止を!!! Stop"Stop the global warming."!!

   
カテゴリー「温室効果」の記事一覧

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灰色大気モデルの罪

 「温室効果」はdeliberate misnomer(故意の誤称)と言われている。「温室効果」および「温室効果ガス」という用語は実際の温室が暖まる現象とは全く機序が異なり、誤解に基づく不適切な名称である。しかし、このネーミングが一般人の感性に受け入れられやすいため地球温暖化問題がここまで大騒ぎになった大きな要因のひとつであり、温暖化論者の狡猾さがうかがえる。本ブログでは今後はできる限りこれらの用語は使用せず「赤外活性」「赤外活性気体(ガス)」という用語を使用することにする。ただし、混乱を招くといけないのでカテゴリーには「温室効果」をそのまま残しておく。
 この温暖化問題の誤解の原点には灰色大気モデルがあるような気がする。熱力学の初歩中の初歩でだれもが最初に通る道である。それゆえあまりにも簡略化し過ぎたこのモデルの影響から温暖化信者は抜け出せないのではないか?いや抜け出せないからこそ温暖化信者なのだろう。以下に灰色大気モデルと実際の地球大気との違いを思いつくままに書いてみる。
 灰色大気モデルとは惑星の上空に太陽放射はすべて透過させるが、地表面からの赤外放射をすべて吸収し再放射する仮想の大気層を考えたものだ。(図1)
haiirotaiki.jpg






まず、大気が何もない場合地表面の放射平衡から(σはStefan-Boltzmann定数)
I=σTg4   ∴Tg=4乗根(I/σ) ・・・・・・①
次に太陽からの入射エネルギーには透明で地表からの赤外放射をすべて吸収する薄い大気層が図のように存在すると仮定する。地表面での放射平衡から
I+σTa4=σTg4
大気層での放射平衡から
2σTa4=σTg4
この二つの式からσTa4を消去して
2I=σTg4    ∴Tg=4乗根(2I/σ)・・・・・・②
①と②を比較すると大気がない場合に比べて地表面の温度は 2の4乗根倍(約1.25倍)に上昇することになる。これが「温室効果」と一般に言われているものである。
 地球の場合、大気が存在しない場合の理論値は255K。実測値はおよそ288K(15℃)でこの差33Kが「温室効果」によるとされている。(理論通りなら約319K=46℃)しかし、この灰色大気モデルはあまりにも単純化されすぎていて多くの問題点を含んでいる。気がつくままにそれらを列挙してみる。(あくまで個人的な考えであることを断っておく)
1.    灰色大気モデルの場合空中に浮遊している薄い層を仮定しているため「地表面」の定義がその存在の有無によらず自明である。しかし、現実の地球大気は地表面に接しておりどこを「地表面=地球の表面」と定義するのかという問題が出てくる。現在主流の考え方は従来通り「地表面」を固体地球としその直上の大気の温度で代用しているが、これが正しいかどうか議論はなされていない。この場合大気も地球の一部であり、大気最上層を地表面とする。あるいは大気層厚の中間高度とか、対流による影響を避けるため対流圏最上部とか、あるいは大気は無視して今までどおり地表面そのものの温度にすべき(直上の気温ではなく)とか、きちんとした議論があってしかるべきであろう。
2.    灰色大気モデルでは非現実的な空中に浮遊した薄い層を仮定しているため、対流や伝導が起こらず、熱の移動は放射だけを考えればよい状況である。それゆえ「放射平衡」を考えることに全く違和感はない。しかし現実の地球大気は引力によって地表面と接しておりある程度の厚みを持っている。そのため対流や伝導による熱の移動が起こっている。そのような動的な大気に「放射平衡」という概念を押しつけることが果たして適切なのであろうか?ここもほとんど議論されていないように思う。
3.    灰色大気モデルでは薄い層を仮定しているため層内部のミクロな構造や分子の運動は無視されており、全く考慮されていない。たとえばこの層は吸収した赤外放射をそのままあらゆる方向に放射するように仮定されているが、実際の地球大気では頻繁に分子衝突が起こっており地表面放射を吸収したあとそれが再放射される確率はごくわずかである。また灰色大気モデルの場合は地表面および灰色大気ともに「黒体放射」を行うことが大前提となっているのだが、実際の地球大気は地表面からの赤外放射の一部しか吸収しない。特に二酸化炭素の吸収域は極端に狭い。もちろん放射も同様である。以前本ブログでも触れたようにここでとんでもない勘違いをしているのが角皆静男、ESD、SGWである。自分の思い込みから、ESDは「赤外不活性」の新定義を提唱、SGWにいたっては「通常ふく射」という新概念を導入して何とか赤外活性分子に黒体放射をさせようと必死であった。「温暖化」という結論が先にあって、そこへ向かって無理やりこじつけやごまかしを使ってでも強引に話を持っていく。まさに温暖化論者の真骨頂である。彼らも灰色大気モデルを通ってきたはずで、その先入観にとらわれて前に進むことができないでいるようだ。
以上、長々と書いてきたがまとめると、
1.地表面をどこにとるか。2.対流、伝導が起こる状態に「放射平衡」を想定することは妥当か。3.いわゆる「再放射」は起こらず、しかも二酸化炭素の場合その波長域は極めて狭い。
筆者自身にも答えがわからないものもあるが、これらはすべて灰色大気モデルの先入観から生じたものではないかと思っている。
 

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放射と衝突

注)この項は私の個人的な考えを述べたものです。計算には自信がありますが、考え方が間違っている可能性は否定しません。(笑)
 
大気からの再放射の解釈に端を発して、地球の熱収支図をめぐる議論がなされている。誰もが一度は見たことがある図だと思うが、基準図として猫田白重のサイトにあるこの図を挙げておく。近藤邦明は「この図の地表面の熱収支はすべて測定または推測可能であり、地表面の『定常状態』を保つためには大気からのbackradiationが必要である。」と主張している。
 これに対して私(たぶんGerlichやThimeも)は「熱移動に双方向はあり得ない。この二つはベクトル量として相殺するべきである。」という主張である。しかし大気からのbackradiationはともかく地表面からの放射の測定値はこの熱収支図の数値を支持しているというのが近藤の主張である。そこでそのあたりのことを考察し、苦し紛れ?に次のような例を考えてみた。
 
【例】質量mの物体A、Bが宇宙空間にある。地球から見てAは速度2vで左から右に等速直線運動をしている。Bも同じ直線上を速度vで同じ方向へ移動している。Aより右方にBがあるとAがBに衝突するのは自明だが、このときエネルギーの移動はどのように記述できるか?
1)物体Aから見た場合
Aは速度vで静止しているBに接近することになる。
衝突後のA、Bの速度をそれぞれva、vbとすると運動量保存の法則から、
mv=mva+mvb ∴v= va+vb・・・・・・・①
エネルギー保存の法則から
0.5mv2=0.5mva2+0.5mvb2    
∴v2= va2+vb2・・・・・②
①、②よりvavb=0 よって解は(va=0、vb=v)または(va=v、vb=0)
要するにAが止まってBが同方向に速度vで動き出すか、Bは止まったままでAがそのままの速度を保って動き続けるかということで、現実的なのは前者であろう。その場合の運動エネルギーの移動を見てみると、0.5mv2の運動エネルギーがAからBに移ったことになる。
2)今度は同じ現象を地球から見た場合、上と同様に
2mv+mv= mva+mvb  ∴3v= va+vb・・・・・・③
0.5m(2v)2+0.5mv2=0.5mva2+0.5mvb2  ∴5v2= va2+vb2・・・・・④
③、④を解いて(va=v、vb=2v)または(va=2v、vb=v)
これも前者が解としては適である。この時の見かけのエネルギーの移動は
0.5m(2v)2-0.5mv2=1.5mv2
したがってAからBに1.5mv2のエネルギーが移動したように見えることになる。もちろん同じ現象で移動したエネルギーが違うというのはあり得ないのでどちらかが間違いである。
 
ながながと書いて何が言いたいかというと、同じ現象でも観測系によって移動するエネルギーが違って見えるということである。2)の場合、物体Bが静止しそれにAが速度vで近づいている(AとBが相対速度vで近づきつつある)系に対して地球上の観測者が速度vで逆方向に動いていると考えればいいのではないか?この場合物体Aを基準に見た1)の場合よりA、Bそれぞれに対して観測者自身の運動から0.5mv2ずつの運動エネルギーの上乗せがあり、それで移動したエネルギーがもともとの0.5mv2より多くなっているように見える。つまり(0.5+0.5+0.5)mv2になっていると考えられる。これを一般化し観測者が速度nvで移動しているとき見かけのエネルギー移動は0.5mv2(2n+1)となる。(計算省略)
しかしこれらはあくまでも見かけのエネルギー移動であり、実際はAとBの相対速度だけを問題にすべきである。つまり観測値をそのまま使用したのでは真の値にはならず、物体間の相対的な速度から運動エネルギーを求めなければならないということである。理由はうまく説明できないのだが、この衝突による運動エネルギーの移動を放射に置き換えれば地球の熱収支図においても同様のことが言えるのではないか?地表面に固定した系で見れば地表面から大気へ向かって26 W/m2の放射が行われているだけなのだが、熱の移動の対象物体外で観測するとそれぞれに上乗せされた放射が観測されるのではないか?そこで運動エネルギーと同様に二つの物体の放射を相殺した「相対放射」を考慮することが熱エネルギーの移動を計算するうえで必要なのではなかろうか?
この運動エネルギーと放射の二つの現象の共通点を思いつくままに列挙してみる。
ⅰ)どちらもエネルギーの移動を表す現象であり数学的にはベクトル量として記述できる。(自信はないけど・・・・)
ⅱ)当該物体から見た場合自分のことはわからない。つまり1)の場合Aは自分が速度vで動いているのか、Bが-vで近づいてきているのかA自身には確かめようがない。つまり自分の持っている運動エネルギーを確かめることができない。これと同じことが放射にも言える。A自身が放射を行っているかどうかはA自身にはわからない。このような場合は他の系で測定した値ではなく物体間での相対評価が必要になるのではないか?

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すべての物質はその絶対温度に応じた電磁波を放射している

「すべての物質はその絶対温度に応じた電磁波を放射している」
どうもこの文章の解釈が温暖化論者と私で違うようだ。
 まず、私自身は10年ほど前に放送大学で天体と宇宙について学んだことがある。その時、恒星の光のスペクトルからどのような物質が存在するかわかる。つまり特定の波長が特定の物質に対比していると教えられた。そして温度が高いときは輝線として温度が低いときは吸収線として見えるということであった、と思う。今となってはうろ覚えだが・・・。()とりあえずここを見れば大きくは間違っていないように思うのだが・・・・。
 それゆえ私自身の大気の放射の考え方も基本的には線スペクトルであり、キルヒホッフの法則から(吸収する波長)=(放射する波長)であると考えている。したがって赤外線を吸収しない酸素や窒素は赤外線を放射しない。「赤外線を吸収する物質は励起状態が十分長時間続けば同じ波長を再放射するが、その他の波長を放射することはない!また対流圏では短時間で分子衝突が起こるため励起状態からの再放射の確率は極めて小さい」というのが私の理解である。しかし残念ながら自信はない。最近冒頭の文章を根拠として温暖化論者からあちこちで私の考えと異なる意見が提出されている。もとより私自身も結論を出せるほど知識があるわけではなく、論点のひとつとしてここに一部を紹介する。

Case1 
静男
 ここの質疑応答欄(質問者は恥ずかしながら筆者)を読んでいただければよくわかるのだが、角皆は気体(窒素や酸素も)赤外放射をしていると考えているようである。たとえば中ほどの
その高度の空気分子もある温度を持っており、連続スペクトルの赤外線を発しています。
あるいは最後の行
物質はすべてその温度に応じてすべて電磁波を放出しています。
などは典型的だ。空気を構成する分子もすべて黒体放射をしていると考えているように受け取れる。ここが私の考えと根本的に違うところである。
また温室効果ガスが増加すると熱が上がってこないので成層圏が寒冷化するという角皆の説明も正確ではないと思う。私は「気圧の低下から衝突のチャンスが少なくなるので宇宙への放射が大きくなるため」と考えている。
念のために一言つけ加えておくが、角皆の放射に関するもしかすると誤解と専門の海洋に関する研究とは無関係である。私は角皆のケイ素仮説は有明海のノリの不作からエチゼンクラゲの大発生、果てはサンゴを食い荒らすオニヒトデの大量発生まで説明できる可能性を秘めた優れものである考えている。
 
Case2 SGW
ここでSGW2008/01/03 10:14のコメントの冒頭に
赤外分光「放射」スペクトルというのは別途測定されることはありませんが吸収スペクトルと同一のグラフですね。
と述べている。これは私の考えと同じである。ところが2008/01/06 15:58の投稿では
再放射はなくても通常の熱ふく射は地表向きのものが半分あるので、Back Radiationという表現でおかしくない
と再放射とは別に「通常ふく射」というものが存在すると述べている。さらに2008/01/10 19:48のコメントで
再放射というのは統計的にはほとんどなく、熱平衡状態のガスとしての放射が出るだけ、というのに同意しますが。(中略)再放射(back radiation)はたんなる温室効果ガスの「放射の下方向成分」と読み代えるのがよろしいかと。んで、ガスによる放射の等方性という性質だけから、温室効果による地表面の昇温が成立します。
と追い討ちをかけている。再放射がほとんどないことに同意しながら別の放射、おそらく絶対温度に応じた通常ふく射(おそらくは黒体放射か?)をしていると考えての主張であろう。ここが決定的に私の理解と違う。どちらが正しいかは私にもわからないが。
 
Case3 ESD 
2008/5/19  19:51のコメントでは
赤外不活性というのは要するに「赤外線を吸収しない」ということであって、放射しないということではありません。つまり窒素や酸素はいわゆる、赤外線を吸収するような温室効果ガスではないという意味で、その点では正しいですが、これらもまた温度を持つ物質なのですから赤外線を放出するのは当然のことです。
と述べ、「赤外不活性」の新定義を持ち出している。そして温度をもつ物質は赤外線(おそらく絶対温度に応じた黒体放射)を放射すると主張している。私の理解とは全く違う。私は吸収しないものは放射もしないと考えている。でも証拠はない。(笑) そのうえ
熱を持っていて赤外線を発しない物質は存在しないことになっていますので、もし窒素で再放射が起こらないことを確認されれば世界的な大発見になる
とまで言い切っている。私の理解はそれほど常識はずれたものなのだろうか?さらに、
無放射緩和過程については下に書いたとおりで、吸収したエネルギーが赤外線の再放射とならずに運動エネルギーすなわち温度となるという事ですが、温室効果ガスの吸収したエネルギーが熱として周囲の気体分子に拡散し、それによって熱を持った窒素や酸素など周囲の気体分子が、今度は赤外線を発したり他の分子に運動エネルギーを与えたりするわけです。
と述べている。これはCase1の角皆と同じ主張かつCase2の
SGWのいう「通常ふく射」を支持しているようだ。
 ところがESDは2008/5/23  1:19の投稿であっさり
気体の窒素や酸素があれほど標準的な黒体輻射と異なる挙動を示すということは存じませんでした。大変失礼致しました。
と自分の非を認めている。もしかすると自ら「世界的大発見」をしたのかもしれない。(笑)
 
 インターネットの世界であるからCase1、2、3が同一人物ではないという保証もないのであるが、このように温暖化を主張する人々の中には大気が地表面へむかって黒体に準じるようなかなりの量の放射を行っており、赤外活性分子が増加することによってさらに増加すると考えている人々が少なからずいるようだ。そしてその根拠がタイトルの「すべての物質はその絶対温度に応じた電磁波を放射している」であり、温暖化の原因となっている。ただ私とは信じるところが違いどちらが正しいのかは私にはわからないが、相容れない考えであることは間違いない。今回、論点のひとつが明確になっただけでも進歩と言えるかもしれない。
 
注:スペースの都合で部分的な引用になりました。皆様はリンク先をよく読んで全体像を把握していただくようお願いします。
 

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CO2倍増時の吸収エネルギーの増加と全天日射量の変化

注:2008年2月20日過ぎ、CO2 Scienceがサイト上で「二酸化炭素温暖化に反論するDVDを発売する」と発表した直後からサイバーテロに襲われダウンしてしまいました。現在は最新号のみ閲覧できますが、過去ログにはアクセスできない状態です。拙ブログからのCO2 Scienceへのリンクは切れたままです。復旧しましたらまたリンクをやり直す予定です。しばらくは御不便をおかけしますが御理解いただきますようお願い致します。(悪魔のささやき管理人、はれほれ)
 
温室効果の説明図を見ると、高層の温室効果ガス(以下GHG)の層から地表へ向かって矢印が描かれており、あたかもGHGが地表へ向かって放射を行ったり熱を移動させたりするようになっている。しかし、熱力学の第2法則によれば高層低温のGHGからより高温の地表に向かって熱が移動することはあり得ない。また実際に長波放射を吸収したGHGが赤外線を再放射するまでの時間は大気中の赤外不活性分子である窒素や酸素などと衝突するまでの時間より長い。そのため衝突によって失活する確率のほうがはるかに大きくGHGの赤外線再放射は極めておこりにくいことが示されている。このことからGHGの本質的な役割は地球から逃げる熱の一部を吸収して酸素や窒素などの赤外不活性分子に衝突して受け渡し、大気温度を上昇させるところにあると考えられる。そこで温室効果ガスが増加するとどれくらいの長波放射の吸収が増えるかということを考えてみる。この点に関してはBarrettが詳細な検討を行っている。
Table1.jpg

Table1 Barrett,Jより引用



Table 1は288Kの黒体放射に対するそれぞれのGHGの吸収率を地表面から100mの光路長で見たものである。つまり1気圧の乾燥空気(窒素、酸素、アルゴン)にそれぞれのGHG 1種類だけを混じてその吸収スペクトルの全放射エネルギーに対する割合を測定したものである。一番上の水蒸気は相対湿度45%で測定されている。(15℃の飽和水蒸気圧は約17hPaであるので相対湿度45%=7.65 hPa=約0.755%)水蒸気の場合地球からの長波放射のエネルギーの68.2%を吸収したというのがこの表の意味である。順に産業革命前の濃度285ppmvのCO2単独では17.0%のエネルギーを吸収している。そしてCO2濃度が倍増して570 ppmvになれば吸収されるエネルギーは18.5%に増加する。メタンの吸収エネルギーは1.2%、一酸化二窒素は0.5%となっている。そして下から3行目の「total」にはこれらの値を合計すると全放射エネルギーの86.9%を吸収することになることが示されている。ところが実際にすべてのGHGを同時に混入してみるとCO2濃度285ppmvでは全放射エネルギーの72.9%、570ppmvでは73.4%の吸収にしかなりませんよというのが最後の2行である。これは水蒸気と他のGHG間で吸収スペクトルの重複があるためである。したがってCO2濃度が倍増すれば理論上は1.5%の吸収エネルギーが増加するわけだが、実際は0.5%の吸収増しか認められない。右列の数字は濃度0.755%の水蒸気の吸収エネルギーを1としたときの各GHGによる吸収エネルギーの割合を示している。
 
またTable 1によれば産業革命前のCO2濃度において高度100mで吸収されるエネルギーは地表放射の72.9%であるから、残りの吸収可能なエネルギーは27.1%である。一方、大気には全く吸収されない「大気の窓」と呼ばれる波長域のエネルギーが存在しこれが22.5%を占めている。吸収可能なエネルギーの残りは
27.1-22.5=4.6(%)
しかない。これがCO2倍増時には4.1%に減少する。ところが、次の100mでも同様に73%程度のエネルギーが吸収されるとすると
0.046x(1-0.73)=0.012
である。したがって地表面からの放射エネルギーのうち吸収可能なエネルギーの99%近くが地上200mですでに吸収されていることになる。
Table2.jpg

Table2 Barrett,Jより引用



Table2は各GHGの全体の吸収エネルギーに占める寄与度である。水蒸気の場合は前掲のTable1から
68.2÷86.9x100=78.5%(288K、相対湿度45%)
とされている。吸収の重なりを他のGHGの吸収と考えた場合の水蒸気の寄与度に相当するとされているが、厳密には近藤邦明のように
{68.2- (86.9-72.9)} ÷72.9x100=74.3(%)
とすべきであろう。また吸収の重なりを水蒸気によると考えた場合は
68.2÷72.9x100=93.6%(288K、相対湿度45%)
となる。この数値が「温室効果の90%以上は水蒸気である。」の根拠となっていることは言うまでもない。
 
さてこのCO2倍増による0.5%の吸収エネルギーの増加がいったいどのくらいの気温上昇をもたらすのであろうか? Barrett は論文の後半においてGHGの有無による温度差33K(288K -255K)から概算してCO2倍増時の温度上昇を0.3℃程度としている。これについては原著や下記のTheorySurgeryの考察を参照してほしい。ただ私自身はこの33Kという値には疑問を持っているので少し違った角度からその影響を検証してみる。
 
ステファンボルツマンの法則から288Kの黒体放射は
5.67x10-8x2884=390(W/m2)
したがってCO2倍増時に温室効果によって余分に吸収されるエネルギーは
390x0.005=1.95(W/m2)
これは1m2あたり1秒につき1.95Jのエネルギーが吸収されることを意味している。1日当たりに換算すれば
1.95x60x60x24=168480(J/m2)=0.17(MJ /m2)
1年あたりでは
0.17x365=62.1(MJ /m2)
となる。これを太陽から受け取るエネルギーと比較する意味で全天日射量と比べてみる。たとえば1日あたりのデータは下記の「ドイツ太陽光エコファンド」のサイトに詳しい。この表で福岡を例にとると最大値は2000年の14.2 MJ /m2で最小値は1993年の11.5 MJ /m2である。年々の1日あたりの平均の日射量でもこれだけ変動があるわけで、はたして0.17 MJ /m2の放射強制力の上乗せがどれくらいの意味を持つのであろうか?確かに1993年は寒冷な年であったが24年間の平均値と比べて1.66 MJ /m2もの日射量の減少があったわけである。また下の表は日立市天気相談所のサイトから転載した1982年から2007年にわたる日立市の全天日射量の年間値である。

日立市年間全天日射量(日立市天気相談所HPより)

年間全天
日射量(MJ/m2)

1982

 4832.8

1983

4667.1

1984

4819.4

1985

 4489

1986

 4508.3

1987

 4483.6

1988

 4576.7

1989

 4560.6

1990

 4401.7

1991

 4097.9

1992

 4232.9

1993

 3949

1994

 4501.5

1995

 4048.2

1996

 4185.5

1997

 3912.5

1998

 4378.9

1999

 5005.6

2000

 5029.1

2001

 5071

2002

 5061.7

2003

 4741

2004

 5223.2

2005

 5147.4

2006

 4592.3

2007

 5164.2

これを見ると4000 MJ /m2以下の少ない年から5000MJ /m2を越える年まであり変動幅は1300 MJ /m2を越えている。ここにCO2倍増時の温室効果上乗せ分 年62.1 MJ /m2が加わったとして果たして有意な影響があるとはとても思えない。ここのサイトは年平均気温や年最高気温の経年グラフもあり、これらと全天日射量の相関などを調べてみるのも面白いかもしれない。といっても自分でやる気はさらさらないが。
 
以上より「CO2倍増時の温室効果の増加分より全天日射量の自然変動の方がはるかに大きくCO2倍増によって有意な気温変化が起こるという確証は認められない。」というのが今回の一応の結論である。この結論に対して「温室効果の増加分はすべて大気を暖めるが、全天日射量の場合は地表面への入射に過ぎない。」など温暖化論者から反論があるかもしれない。しかし平均的な地球のアルベドを30%としても太陽放射の自然変動に比べて温室効果の増加分はけた違いに小さい。もしも温暖化論者のいうように二酸化炭素濃度が倍増したときに壊滅的な影響が地球環境に起こるのなら、全天日射量が100 MJ /m2増加しただけでも同様の変化が起こるのではないか。それならこの20年あまりで何回も地球は大打撃を受けていなければならないことになる。
 
本稿の内容の一部は、日本気象予報士会西部支部2007年11月例会において「『温室効果』にみる嘘と誤魔化しと間違い」のなかの一項目として述べたものです。
 
参考論文
中田宗隆:地球温暖化現象に学ぶ物理化学の基礎(3)現代化学No.444(2008) 
Barrett,J:Greenhouse molecules their spectra and function in the atmosphere. Energy & Environment Vol.16 p1037(2005)

参考サイト

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気象衛星画像から見た再放射の可能性

注:この記事をご覧になった方はコメント欄の近藤邦明氏の指摘もあわせてご覧いただくようお願いします。(2007年10月26日)
気象衛星画像には可視画像、赤外画像、水蒸気画像の三種類がある。可視画像は人間の目で見た画像と同じで物体から反射してきた太陽光(可視光)を見ている。よって夜間は画像は見ることができない。
赤外画像は天気予報などで使用されており一般の人にもなじみのある画像である。これは大気によって吸収されない「大気の窓」と呼ばれる波長域の赤外線(ひまわり5号の場合:波長10.5~12.5μm)を測定して、この波長の強度から「相当黒体温度」を推定し画像を得ている。「相当黒体温度とはその波長帯の放射がStefan-Boltzmannの法則に従う黒体放射の一部だと仮定した場合のその黒体の温度のことである。
ここのサイトの説明がわかりやすいので参照していただきたい。↓に赤外画像の例を示す。
赤外画像
上の画像から明らかなように赤外画像で見ることができるのは地表面、海水面、そして雲(雲頂)の三つしかない。言い換えればこの三つの物体は放射を行っており、近似的に黒体とみなすことができるということである。一方で温暖化論者の支持する「放射平衡モデル」のように大気が黒体として近似できるのなら、当然大気からの放射もこの画像で写るはずだ。しかしそんなものはどこにもない。従ってこの画像1枚からでも彼らの理論が間違いであることがわかる。
TheorySurgeryは「再放射の可能性」において放射温度計を例にとり大気の放射は小さく温室効果ガスによる再放射の可能性は極めて低いと主張し、『最も「再放射」を行う可能性がある大気物質を考えてみますと、それはおそらく雲になるのではないかと思います。』と推論している。この画像は彼の推論が核心をついていることを物語っている。

最後に一般にはなじみが薄いが、水蒸気画像というものがある。これは同じ赤外域でも水蒸気による吸収が大きい6.5~7.0μmの波長を使用して対流圏上・中層の水蒸気の分布をみるもので↓に例を示す。
200710121030-00WV.png







この水蒸気画像の撮影原理は「気象衛星画像の見方と利用」(鈴木和史ほか、気象業務支援センター)には以下のように書いてある。
水蒸気による吸収が非常に大きい波長帯で観測しているため、観測される放射量は赤外線を放射する物体の温度よりも衛星と物体との間にある水蒸気量によって決まる』
下層雲あるいは地面を含む下層からの放射は、その上にあるわずかな水蒸気によってすべて吸収されてしまう。対流圏より上空では水蒸気はほとんどないので上層からの放射はそのまま衛星に届く。-中略-。中層で放射されたものは上・中層にある水蒸気量の影響を受け、水蒸気が非常に少なければ衛星に到達する放射は多くなり、画像上では暗く見える。』(太字、色文字=はれほれ)
 
もしも再放射がおこるのなら下層の放射を吸収した水蒸気からの再放射が衛星に捉えられるはずである。また同様にして中・上層の水蒸気からの再放射も捉えられるはずである。つまり温室効果ガスとして最も強力な水蒸気にも再放射は認められないということである。このことはTheorySurgeryが量子力学的な観点から導いた「温室効果ガスの再放射の可能性は極めて低い」という結論を強く支持するものである。もちろんそれと同時に温暖化論者の支持する温室効果理論を支える「放射平衡モデル」の根底を揺るがすものである。我々はもう一度地球大気の熱の移動について考えなおさなければならない。
この文章で少しは地球温暖化問題に関して気象予報士らしい仕事ができたかなと思っているが、「お前は気象予報士のくせに今までこんなことにも気がつかなかったのか!」と言われれば返す言葉がない・・・・・。

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自称、気象予報士。

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