「すべての物質はその絶対温度に応じた電磁波を放射している」
どうもこの文章の解釈が温暖化論者と私で違うようだ。
まず、私自身は10年ほど前に放送大学で天体と宇宙について学んだことがある。その時、恒星の光のスペクトルからどのような物質が存在するかわかる。つまり特定の波長が特定の物質に対比していると教えられた。そして温度が高いときは輝線として温度が低いときは吸収線として見えるということであった、と思う。今となってはうろ覚えだが・・・。(笑)とりあえずここを見れば大きくは間違っていないように思うのだが・・・・。
それゆえ私自身の大気の放射の考え方も基本的には線スペクトルであり、キルヒホッフの法則から(吸収する波長)=(放射する波長)であると考えている。したがって赤外線を吸収しない酸素や窒素は赤外線を放射しない。「赤外線を吸収する物質は励起状態が十分長時間続けば同じ波長を再放射するが、その他の波長を放射することはない!また対流圏では短時間で分子衝突が起こるため励起状態からの再放射の確率は極めて小さい」というのが私の理解である。しかし残念ながら自信はない。最近冒頭の文章を根拠として温暖化論者からあちこちで私の考えと異なる意見が提出されている。もとより私自身も結論を出せるほど知識があるわけではなく、論点のひとつとしてここに一部を紹介する。
ここの質疑応答欄(質問者は恥ずかしながら筆者)を読んでいただければよくわかるのだが、角皆は気体(窒素や酸素も)赤外放射をしていると考えているようである。たとえば中ほどの
「その高度の空気分子もある温度を持っており、連続スペクトルの赤外線を発しています。」
あるいは最後の行
「物質はすべてその温度に応じてすべて電磁波を放出しています。」
などは典型的だ。空気を構成する分子もすべて黒体放射をしていると考えているように受け取れる。ここが私の考えと根本的に違うところである。
また温室効果ガスが増加すると熱が上がってこないので成層圏が寒冷化するという角皆の説明も正確ではないと思う。私は「気圧の低下から衝突のチャンスが少なくなるので宇宙への放射が大きくなるため」と考えている。
念のために一言つけ加えておくが、角皆の放射に関するもしかすると誤解と専門の海洋に関する研究とは無関係である。私は角皆のケイ素仮説は有明海のノリの不作からエチゼンクラゲの大発生、果てはサンゴを食い荒らすオニヒトデの大量発生まで説明できる可能性を秘めた優れものである考えている。
ここでSGWは2008/01/03 10:14のコメントの冒頭に
「赤外分光「放射」スペクトルというのは別途測定されることはありませんが吸収スペクトルと同一のグラフですね。」
と述べている。これは私の考えと同じである。ところが2008/01/06 15:58の投稿では
「再放射はなくても通常の熱ふく射は地表向きのものが半分あるので、Back Radiationという表現でおかしくない」
と再放射とは別に「通常ふく射」というものが存在すると述べている。さらに2008/01/10 19:48のコメントで
「再放射というのは統計的にはほとんどなく、熱平衡状態のガスとしての放射が出るだけ、というのに同意しますが。(中略)再放射(back radiation)はたんなる温室効果ガスの「放射の下方向成分」と読み代えるのがよろしいかと。んで、ガスによる放射の等方性という性質だけから、温室効果による地表面の昇温が成立します。」
と追い討ちをかけている。再放射がほとんどないことに同意しながら別の放射、おそらく絶対温度に応じた通常ふく射(おそらくは黒体放射か?)をしていると考えての主張であろう。ここが決定的に私の理解と違う。どちらが正しいかは私にもわからないが。
2008/5/19 19:51のコメントでは
「赤外不活性というのは要するに「赤外線を吸収しない」ということであって、放射しないということではありません。つまり窒素や酸素はいわゆる、赤外線を吸収するような温室効果ガスではないという意味で、その点では正しいですが、これらもまた温度を持つ物質なのですから赤外線を放出するのは当然のことです。」
と述べ、「赤外不活性」の新定義を持ち出している。そして温度をもつ物質は赤外線(おそらく絶対温度に応じた黒体放射)を放射すると主張している。私の理解とは全く違う。私は吸収しないものは放射もしないと考えている。でも証拠はない。(笑) そのうえ
「熱を持っていて赤外線を発しない物質は存在しないことになっていますので、もし窒素で再放射が起こらないことを確認されれば世界的な大発見になる」
とまで言い切っている。私の理解はそれほど常識はずれたものなのだろうか?さらに、
「無放射緩和過程については下に書いたとおりで、吸収したエネルギーが赤外線の再放射とならずに運動エネルギーすなわち温度となるという事ですが、温室効果ガスの吸収したエネルギーが熱として周囲の気体分子に拡散し、それによって熱を持った窒素や酸素など周囲の気体分子が、今度は赤外線を発したり他の分子に運動エネルギーを与えたりするわけです。」
と述べている。これはCase1の角皆と同じ主張かつCase2の
SGWのいう「通常ふく射」を支持しているようだ。
ところがESDは2008/5/23 1:19の投稿であっさり
「気体の窒素や酸素があれほど標準的な黒体輻射と異なる挙動を示すということは存じませんでした。大変失礼致しました。」
と自分の非を認めている。もしかすると自ら「世界的大発見」をしたのかもしれない。(笑)
インターネットの世界であるからCase1、2、3が同一人物ではないという保証もないのであるが、このように温暖化を主張する人々の中には大気が地表面へむかって黒体に準じるようなかなりの量の放射を行っており、赤外活性分子が増加することによってさらに増加すると考えている人々が少なからずいるようだ。そしてその根拠がタイトルの「すべての物質はその絶対温度に応じた電磁波を放射している」であり、温暖化の原因となっている。ただ私とは信じるところが違いどちらが正しいのかは私にはわからないが、相容れない考えであることは間違いない。今回、論点のひとつが明確になっただけでも進歩と言えるかもしれない。
注:スペースの都合で部分的な引用になりました。皆様はリンク先をよく読んで全体像を把握していただくようお願いします。
COMMENT
放射について
◆酸素や窒素からの放射というと、私のサイトでも紹介したこちら
http://pat.geophys.tohoku.ac.jp/~www/lab/wclub01.pdf
などには酸素の63μm帯での放射がありますし、あるいはオゾン9.6μm帯やNOの5.3μm帯の放射もあります。成層圏はオゾンや酸素が紫外線を吸収して暖まりますが、紫外線を有意に放射するには成層圏の温度では全く足りませんから放射は二酸化炭素、オゾン、水蒸気の赤外線になります。
>温室効果ガスが増加すると熱が上がってこないので成層圏が寒冷化するという角皆の説明
◆『熱』が赤外放射だとすると、下層の温室効果ガスが薄いつまり高層に届く地球放射が多い状態というのは高層の温室効果ガスはもっと薄くなりますから、もっぱら透過してしまうでしょう。地球放射のエネルギーがもっぱら透過してしまうわけですから、伝導対流によって熱が来る機会も少ないでしょう。
◆SGWさんのいう「ガスによる放射の等方性という性質だけから、温室効果による地表面の昇温が成立します。」ここが問題で、放射の性質があることと、放射が地表面まで届いて地表を暖めることとは違うはずなのに、温暖化論者は性質=温暖化としてしまう。
これは高気圧下での温室効果ガスの再放射があるなしに係らず、下層での赤外吸収が飽和した時点で地球放射は全て地表に返されている、あるいは全て無放射緩和過程から熱に回ってしまっており、どちらにしろもうそれ以上温暖化しないわけです。ところが吸収放射の性質がある温室効果ガスが増えただけで気温が上がってしまう気候モデルでは更なる気温上昇が起きてしまう。
Re:放射について
>◆酸素や窒素からの放射というと、私のサイトでも紹介したこちら
>http://pat.geophys.tohoku.ac.jp/~www/lab/wclub01.pdf
>などには酸素の63μm帯での放射がありますし、あるいはオゾン9.6μm帯やNOの5.3μm帯の放射もあります。成層圏はオゾンや酸素が紫外線を吸収して暖まりますが、紫外線を有意に放射するには成層圏の温度では全く足りませんから放射は二酸化炭素、オゾン、水蒸気の赤外線になります。
URLが不完全なようで猫田さんのところをあわてて探してみたのですが、わかりませんでした。「吸収」ではなくて「放射」の図なのですね。オゾンやNOは吸収波長と一致した放射帯と思います。酸素の63μmというのはどうでしょうか?普通良く見る吸収波長のグラフは地球放射の波長域を考慮していますので50μmまでしか扱ってないですよね。
>>温室効果ガスが増加すると熱が上がってこないので成層圏が寒冷化するという角皆の説明
>◆『熱』が赤外放射だとすると、下層の温室効果ガスが薄いつまり高層に届く地球放射が多い状態というのは高層の温室効果ガスはもっと薄くなりますから、もっぱら透過してしまうでしょう。地球放射のエネルギーがもっぱら透過してしまうわけですから、伝導対流によって熱が来る機会も少ないでしょう。
↑の猫田さんの主張はそのとおりだと思います。角皆先生は「二酸化炭素濃度が現在よりさらに増加すると」という文脈で述べておられます。私は「高層では赤外活性分子は宇宙への放熱により冷却作用を有している」からとするべきだと考えています。
>◆SGWさんのいう「ガスによる放射の等方性という性質だけから、温室効果による地表面の昇温が成立します。」ここが問題で、放射の性質があることと、放射が地表面まで届いて地表を暖めることとは違うはずなのに、温暖化論者は性質=温暖化としてしまう。
>これは高気圧下での温室効果ガスの再放射があるなしに係らず、下層での赤外吸収が飽和した時点で地球放射は全て地表に返されている、あるいは全て無放射緩和過程から熱に回ってしまっており、どちらにしろもうそれ以上温暖化しないわけです。ところが吸収放射の性質がある温室効果ガスが増えただけで気温が上がってしまう気候モデルでは更なる気温上昇が起きてしまう。
私もそのように思います。近藤さんのところで中本先生が「二酸化炭素地球温暖化仮説と巨大マスコミと学者たち」において気候モデルについて「地表面の熱容量はゼロとして、地表面にたいする放射加熱はすべて大気を暖めるとする。」と述べておられます。おそらくここが、気候モデルだけでなく温暖化論者との考え方が根本的に違うところだと思います。
無題
コメントさせてください。
> 赤外線を吸収する物質は励起状態が
> 十分長時間続けば同じ波長を再放射するが、
> その他の波長を放射することはない!
> また対流圏では短時間で分子衝突が起こるため
> 励起状態からの再放射の確率は極めて小さい
物理では、エルゴード性(時間平均=アンサンブル(集団)平均)
を前提にしてますから、母集団が十分大きければ・・・
(分かりますよね(笑))。
少し細かいことを述べますが、対流圏は、
開放系(非平衡:物質とエネルギーが出入りする)であって、
孤立系(物質とエネルギーが出入りしない)ではないので、実は、
熱平衡(=エントロピー最大の状態:温度が定義できる)
にはなれないんですよ。
ただ、データの補償(物質とエネルギーの出る量≒入る量)もあって、
定常状態(←非平衡)を保っているという仮定にたって、
非平衡であるにもかかわらず、
平衡系の概念である温度を導入している訳なんです。
分光の本って、読みにくいものが多いですが、
放射と吸収の仕組みの説明として、私が推薦するのは、
『光学のすすめ』 です。
http://www.optronics.co.jp/books/bookinfo/bookdata/0000_8.html
熱放射(=黒体放射=プランクの式 at 熱平衡)って何なのか?
よくわかるように解説してます。少し、解説しますね。
ウィキペディアの「黒体」に掲載されている式(=プランクの式)
を見ればわかるように、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E9%BB%92%E4%BD%93
熱平衡(温度T=一定)の下では、放射強度B(λ)は、
λ(→⊿E:下参照)のみで決まります。
想定していただきたいモデル(『光学のすすめ』)は、
放射に関わる過程(放射・吸収)のみを考え、
分子ないし原子の
励起状態(エネルギー準位:Ee、数密度:Ne)
基底状態(エネルギー準位:Eg、数密度:Ng)
エネルギー準位の差=⊿E=Ee-Eg=hc/λ
アインシュタインのA係数(自然放出係数)
アインシュタインのB係数(誘導放出係数=吸収係数)
を条件として与えます。
熱平衡とは、
⊿Eに相当する単色光の強度密度:ρ(⊿E)=一定
放射数密度(励起状態 → 基底状態)= 吸収数密度(基底状態 → 励起状態)
(A+B・ρ)・Ne = B・ρ・Ng
A+B・ρ:放射確率、B・ρ:吸収確率
と定義できます。熱平衡下では、
ボルツマン分布=Ne/Ng=exp(-⊿E/kT)が、
必ず成立しますので、
ρ=ρ(⊿E)=(A/B)・(1/(exp(⊿E/kT)-1))
つまり、この ρ が上で述べた、
熱放射(=黒体放射=プランクの式 at 熱平衡)であり、
放射強度B(λ)に相当するものなんです。
長々と解説したのは、熱放射(=黒体放射)の式の導出過程が分かれば、
「すべての物質はその絶対温度に応じた電磁波を放射している」
に対する解釈も、自ずと明らかになるだろうと考えてのことです。
> 温度が高いときは輝線として温度が低いときは
> 吸収線として見えるということであった
で考えてみましょう。
物質(原子 or 分子 → ⊿E、A、B)さえ特定されれば、熱平衡下、
温度(T)のみで決まる励起状態と基底状態の
状態密度の比=Ne/Ng=exp(-⊿E/kT):ボルツマン分布があり、
熱放射=ρ(⊿E)がある訳です。
輝線として見えるということは、
Ne/Ng > exp(-⊿E/kT)
すなわち、熱放射で見積もられる温度よりも、
当該物質の温度が高い故に、
熱平衡に向かって、
Ne/Ng = exp(-⊿E/kT)なるべく、
放射することであり、
吸収線として見えるということは、
Ne/Ng < exp(-⊿E/kT)故に、
Ne/Ng = exp(-⊿E/kT)なるべく、
吸収することを意味します。
つまり、当該物質の状態密度の比=Ne/Ngと、
これに相当する熱放射=ρ における温度の大小関係で、
輝線か吸収線かが決まるということです。
「すべての物質はその絶対温度に応じた電磁波を放射している」
というお題目については、アインシュタインのB係数
(誘導放出係数=吸収係数)を見てもらえば、
分かるように、吸収と放射が表裏一体であることから考えてみることです。
熱平衡下では、吸収のないところ、放射はありえません。
放射のないところ、吸収はありえません。
平衡からずれれば、平衡にいたるべく、
放射ないし吸収が起こらねばなりませんから。
長広舌失礼致しました。
アインシュタインのB係数はなぜ吸収係数になるの?
>対流圏は、開放系(非平衡:物質とエネルギーが出入りする)であって、
>孤立系(物質とエネルギーが出入りしない)ではないので、実は、
>熱平衡(=エントロピー最大の状態:温度が定義できる)になれない
★温度が均一=エントロピー最大ということですね。なんとなくですが、理解できる気がします。
>熱平衡(温度T=一定)の下では、放射強度B(λ)は、
>λ(→⊿E:下参照)のみで決まります。
★ここまではOKです。プランクの式でTが決まればあとはλ以外は全部定数ですね。
>アインシュタインのB係数(誘導放出係数=吸収係数)
★ここらへんから怪しくなってきます。(笑)なぜ誘導放射のB係数が吸収係数に等しいのか理解できません。
>(A+B・ρ)・Ne = B・ρ・Ng
★つまり自然放射と誘導放射の確率に励起状態の量子の数をかけたもの(つまり励起状態から基底状態にもどる量子数)が、新たに電磁波を吸収して励起状態になる量子数と等しい状態が「平衡」ということですね。ここでアインシュタインのB係数が吸収係数として使われてますが、理由はよくわからないけどそのまま受け入れています。(笑)
>輝線として見えるということは、
>Ne/Ng > exp(-⊿E/kT)
>すなわち、熱放射で見積もられる温度よりも、
>当該物質の温度が高い故に、
>熱平衡に向かって、
>Ne/Ng = exp(-⊿E/kT)なるべく、
>放射することであり
>つまり、当該物質の状態密度の比=Ne/Ngと、
>これに相当する熱放射=ρ における温度の大小関係で、
>輝線か吸収線かが決まるということです。
★熱放射で見積もられる温度より物質の温度が高いと輝線になる。温度が高い状態=励起している量子が多い。おかげさまでここらへんはなんとなくおぼろげながらわかったような気がします。
>「すべての物質はその絶対温度に応じた電磁波を放射している」
>というお題目については、アインシュタインのB係数
>(誘導放出係数=吸収係数)
★実はやはりここがわかっていません。ここが理解できないとまだ「科学」の領域ではなく「宗教」の範囲ですね。(笑)
沈思黙考さんおすすめの「光学のすすめ」はアマゾンでは売り切れで中古しかないようです。もともとこの温暖化問題から撤退を決めたのはこれ以上やるにはどうしても「ミクロの話」が避けて通れないことと、政治的な発言をしなければならなくなりそうなことが原因です。深入りすべきかどうかよく考えてみます。
上昇気流の発生を否定している温室効果メカニズム
温室効果のメカニズムを、上昇気流の発生メカニズムという観点から検証したら、面白い結果が出ました。
以下の記述は、私が先日アップした「上昇気流の発生を否定するIPCCの気候モデル=温室効果ガス地球温暖化理論」からの引用です。http://blogs.dion.ne.jp/spiraldragon/archives/7435838.html
(以下引用)
「IPCCの気候モデル=温室効果ガス地球温暖化理論」が拠り所としている気象理論とは、大気中に漂っている水蒸気・CO2等の温室効果ガスが、地表面(陸地・海面)から上空へと放射される赤外線を吸収した後に、放射状に「再放射」し、「再放射」する赤外線の一部は地表面に向かうので、大気中の温室効果ガス濃度が増加すれば、地表面に向けて再放射される赤外線の量も増加するので、平均気温が上昇するという「再放射論理」と言い換えることができます。
でも、この「再放射論理」が正しければ、例えば水蒸気が地表放射の赤外線を吸収した後に、その赤外線は「再放射」されてしまうということですので、つまりは水蒸気分子は「加熱」された後に直ちに「冷却」されることになるので、上昇気流は発生しないことになってしまいます。
(引用終わり)
いかがでしょうか?
私は、今回の検証作業を通じて、気象学の教科書に書かれている「温室効果理論=再放射理論」は間違っていると確信しました。
Re:上昇気流の発生を否定している温室効果メカニズム
>この「再放射論理」が正しければ、例えば水蒸気が地表放射の赤外線を吸収
>した後に、その赤外線は「再放射」されてしまうということですので、
>つまりは水蒸気分子は「加熱」された後に直ちに「冷却」されることに
>なるので、上昇気流は発生しないことになってしまいます。
この再放射に関しては「江守の第1種永久機関」以後いろいろと論議を呼んでいますね。ただ温暖化論者の中には「赤外活性物質が吸収した放射とは別の放射」を念頭において議論をしている人々がいますのでそういう人たちの主張をここで取り上げてみました。私も完全に理解できたわけではないのですが、沈思黙考さんやTheorySurgeryさんのご意見からは彼らの方が間違っているように思います。残りの問題は近藤純正氏が「実測」として提示している大気の下向き放射のグラフです。これをきちんと説明しないと説得力がありません。
スパイラルドラゴンさんは↓の論文は読まれましたか?ここには“atmospheric backradiation”は物理学や数学の法則に照らしてナンセンスであると明言しています。
http://www.geocities.com/atmosco2/backrad.htm
低エネルギー準位へ分配される光
>>「赤外線を吸収する物質は励起状態が十分長時間続けば同じ波長を再放射するが、その他の波長を放射することはない」
これは真空中におけるバルマー系列などの輝線(電子遷移)からの類推によるものだと思いますが、一原子分子である水素原子などにはあてはまっても、必ずしも他の分子の励起状態には当てはまらないと思います。たとえば、一般に、凝縮相中における電子遷移に伴う発光スペクトルは、吸収スペクトルよりも長波長になります。
http://cobalt.chem.es.osaka-u.ac.jp/miyasaka/study/stokes/stokes.html
http://kuchem.kyoto-u.ac.jp/hikari/Kimra0806/scfpart2.htm
振動遷移においても、分子内により低レベルのエネルギー準位があれば、その準位への遷移が起こる可能性があります。たとえば、4μmの振動モードを励起した場合、その分子が10μmの振動モードを持っていれば、その準位への分子内エネルギー再分配が起こり、10μmの波長の光が放出されることもあると思います。
また、振動準位は、副準位として、回転準位をもっています。振動励起状態から基底振動状態へ放射による失活を行う場合、基底振動準位の基底回転準位だけでなく、基底振動準位の励起回転準位への遷移が起こる可能性もあります。この場合は、その回転準位の差分との兼ね合いで、長波長になります。
エネルギーは、エントロピーの法則にしたがって、常に低い方へと流れる性質があると思います。光の場合も、物質に吸収された場合は、その物質内の様々なエネルギー準位に分配され、最終的に低エネルギーの光として再放出されることになると考えられます。もちろん、同じ波長を放出する過程もありますが、今回は、細かい話ですが、長波長の放出過程の可能性もあるということを強調したいためにコメントしました。
Re:低エネルギー準位へ分配される光
>凝縮相中における電子遷移に伴う発光スペクトルは、吸収スペクトルよりも
>長波長になります。
★リンク先を拝見しましたが、ほとんど理解できませんでした。(笑)溶液中ではより長波長の電磁波を放射することがあるということのようですね。
>4μmの振動モードを励起した場合、その分子が10μmの
>振動モードを持っていれば、その準位への分子内エネルギー再分配が起こり、
>10μmの波長の光が放出されることもあると思います。
>振動励起状態から基底振動状態へ放射による失活を行う場合、基底振動準位の
>基底回転準位だけでなく、基底振動準位の励起回転準位への遷移が
>起こる可能性もあります。この場合は、その回転準位の差分との兼ね合いで、
>長波長になります。
★おっしゃることは理解できたと思います。沈思黙考さんは一般論を教えてくださり、TheorySurgeryさんは例外というか特殊な場合もありますよということを提示してくださったと理解しました。「エネルギーは高い方から低い方に流れる」これも私の苦手なエントロピーの法則なのですね。(笑)
負の概念
また長文になってしまいましたが、好奇心の赴くままに、
ゆっくり読んでみてください。
参考サイトとして紹介されている
「TheorySurgery;無放射的なエネルギーの散逸過程の寄与の定式化」
を遅ればせに、読ませていただきました。
私が紹介した熱放射(=黒体放射)は、
TheorySurgery さんも導出してたんですね。
>> dN2 / dt = - ( A + B・I ) N2 + B・I・N1
ここで、d・N2/dt=0
⇒(A+B・I)N2=B・I・N1、I=一定
と置くことで、
>> (I =) E(ν,T) = 8πhν3 / {c3 [ exp(hν/ kBT) - 1 ] }
として、プランクの式が導き出されてます。
>> 実際の気体分子のように、無放射緩和過程の寄与がある場合の
>> プランクの黒体放射エネルギーの内訳を
>> 明確にすることができるようになった。
>> E(ν,T) = (Φr + Φnr )・ E(ν,T)
>> CO2の振動励起状態のように、
>> 放射緩和過程の量子収率(Φr)が小さければ、
>> 黒体放射であらわされるエネルギーの大部分は
>> 必然的に無放射緩和に分配されていることになる。
CO2の緩和過程は、無放射緩和が支配的
(0 < Φr < Φnr < 1、Φr + Φnr = 1)
だという穏当な内容ですね。
> 政治的な発言をしなければならなくなりそう
仰る通りですね。
実は、私、ブログ「温暖化いろいろ」の多岐にわたる情報発信を見て、
SGWさんの素養(人となり、教養)を知りたくなり、議論してみたんです。
http://www.janjanblog.jp/user/stopglobalwarming/stopglobalwarming/14559.html#more
意見交換に応じてくださったので、判断材料ができた訳ですが、
説得すること自体を、途中から重要視しなくなった理由は、
森田実著『戦後左翼の秘密』を読んでいたからなのです。
「自己の正当性を極端に強調」しないと「抗争に敗けてしまう」ので、
いかり肩にならざるを得ない状況なんだろうと・・・
「TheorySurgery;無放射的なエネルギーの散逸過程の寄与の定式化」
における TheorySurgery さんとSGWさんのやり取りは面白いですね。
私との意見交換同様、間違った見解(2008/01/05 16:38| URL | SGW)を
披露している様子を見て、なるほど・・・と感慨にふけってしまいました。
>> 2008/01/06 15:58| URL | SGW
>> 再放射はなくても通常の熱ふく射は地表向きのものが半分あるので、
>> Back Radiationという表現でおかしくない
>> 2008/01/10 19:48| URL | SGW
>> 再放射というのは統計的にはほとんどなく、
>> 熱平衡状態のガスとしての放射が出るだけ、というのに同意しますが。
>> 再放射(back radiation)はたんなる温室効果ガスの
>> 「放射の下方向成分」と読み代えるのがよろしいかと。んで、
>> ガスによる放射の等方性という性質だけから、
>> 温室効果による地表面の昇温が成立します。
このコメントは、意味不明ですね。
通常の熱ふく射=Back Radiation と言いたいのか?
再放射=Back radiation と言いたいのか? 分かりません。
単なる書き間違えを想定したところで、(再)放射と(再)吸収は、
熱平衡でも、常時起こっており、科学の常識では、
通常の熱ふく射 by(再)放射・(再)吸収 です。
TheorySurgery さんの観点は、「地球からの熱放射」において、
http://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/d/dd/Atmospheric_Transmission_JA.png
「大気の窓」と呼ばれる帯域のように、
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E5%A4%A7%E6%B0%97%E3%81%AE%E7%AA%93
210-310Kの熱放射(黒体放射)の曲線に
フィットしているスペクトル成分(青色)と、
CO2の吸収帯域のスペクトル成分との違いを、
> Ne/Ng < exp(-⊿E/kT)故に、
> Ne/Ng = exp(-⊿E/kT)なるべく・・・
ではなく(← 放射と吸収のみの場合)、
放射と吸収に加え、無放射緩和過程を考慮した上で、
0 < Φr < Φnr < 1、Φr + Φnr = 1 として、
無放射緩和(分子振動)が原因であると述べておられる訳です。
地球からの熱放射(210-310K)として、
CO2の吸収帯域のスペクトル成分が欠けているのは、
CO2の温度が低いからではなく、210-310Kの放射成分が、
210-310Kに相当する無放射(振動)成分として、
寄与しているからだと・・・
> なぜ誘導放射のB係数が吸収係数に等しいのか理解できません。
吸収と放射を別物だと考えずに、
誘導放射=負の吸収(-1個の光子の吸収)、
或いは、吸収=負の誘導放射(-1個の光子の誘導放射)
と考えてみたらどうです?
吸収というイベントは、光子がないと起こらず、
光子数、即ち、熱放射(ρ)に比例します。
熱放射を前提としているという意味・・・
熱放射に誘導されて・・・という意味で、吸収=誘導吸収です。
これと正反対の過程が、レーザー発振で利用される誘導放射です。
追記、放射には、熱放射(光子数)に比例する誘導放射の他に、
熱放射(光子数)の有無に関係なく放射する過程として、
自然放射がありますが、熱放射(光子数)の有無に関係のない
吸収過程はありません。
Re:負の概念
リンク先拝見しました。温暖化論者はいつも自信満々でいられるのか不思議に思っていたのですが、なぞが解けました。(笑)
位相
> 2個の光が出ていく図が描かれています。
現代化学(2008年3月号)の47頁の図2のことですね。
何か誤解されているみたいなので、趣向を変えてみますね。
光は、粒子性(← 光子)とともに、波動性を持っています。
~ で、光子1個を表すことにします。
波の形(位相)が同じ光子を3個( 位相が同じ ⇒ 振幅が3倍 )想定します。
「位相」
http://ja.wikipedia.org/wiki/%E4%BD%8D%E7%9B%B8
●(誘導)吸収
~
~ ⇒ ~
~ ~
当たり前のことですが、吸収の前後(光子 3個→2個)で、
振幅は減少しますが、波の位相そのものは変わりません。
誘導放射とは、
> 一度吸収がおこり基底状態→励起状態が起こった後に
> 「平衡」状態を維持するために励起→基底の変化が誘発された
訳ではなく(誘導放射自体は、平衡でなくても起こりますし、
誘導放射の過程で吸収は起こりません)、上記した(誘導)吸収の前後が、
入れ替わるだけのこと(光子 2個→3個)なんです。
●誘導放射
~
~ ⇒ ~
~ ~
誘導放射とは、放射の前後で、波の位相を維持したまま、
振幅(=光子の数)を増加させる現象(⇒ レーザーの基本原理)です。
入射光と同じ位相の光子を放射(吸収)するという現象が、
誘導放射(吸収)なのです。この意味で、誘導放射と吸収は表裏一体なのです。
(自然放射(入射光と無関係な放射)の位相 ≠ 入射光の位相)。
Re:位相
>現代化学(2008年3月号)の47頁の図2のことですね。
そのとおりです。
>何か誤解されているみたいなので、趣向を変えてみますね。
やっぱり。(笑)
位相については大丈夫です。誘導吸収についてもOKです。
>(誘導放射自体は、平衡でなくても起こりますし、
>誘導放射の過程で吸収は起こりません)、上記した(誘導)吸収の前後が、
>入れ替わるだけのこと(光子 2個→3個)なんです。
>誘導放射とは、放射の前後で、波の位相を維持したまま、
>振幅(=光子の数)を増加させる現象(⇒ レーザーの基本原理)です。
そうすると、最初の理解でよかったわけですね。あの図は間違っていない。
>入射光と同じ位相の光子を放射(吸収)するという現象が、
>誘導放射(吸収)なのです。この意味で、誘導放射と吸収は表裏一体なのです。
>(自然放射(入射光と無関係な放射)の位相 ≠ 入射光の位相)。
これが「負の吸収」にたとえられた理由ですね。そう考えるといちおう納得はできますが、そうすると「なぜ吸収もしないのにそばを通っただけの電磁波の位相を感知できるのか」という疑問が残ります。(これがあの図を『間違い』と考えた理由です)ちょっと調べてみたのですが、同じような疑問を持った方がおられるようです。
http://soudan1.biglobe.ne.jp/qa3974944.html
ここの回答2をよんでも私にはよく理解できないのですが、とりあえず「マイナス一個の吸収だから係数は吸収と同じ」と覚えておきます。(笑)
誘導放射
一端、吸収しないと電磁波の位相を感知できないというのは、はれほれさんの誤解です。
はれほれさんは、吸収過程(基底状態→励起状態)、
つまり基底状態の電子のみを重視している訳ですが、
ボルツマン分布からも明らかなように、励起状態の電子も必ず存在しています。
放射過程(自然放射と誘導放射)に関わっている電子は、
基底状態ではなく、励起状態の電子なのです。
繰り返しますと、吸収過程は基底状態の電子に着目し、放射過程は励起状態の電子に着目している訳です。
つまり、放射過程(励起状態→基底状態)では、最初から励起状態に電子があるので、
熱放射(電磁波)を吸収する必要など、そもそも最初からない訳です。
はれほれさんは、基底状態にある電子が、電磁波の位相を感知できる一方で、
励起状態にある電子が、電磁波の位相を感知できないと考えることの方に疑問を持たれませんか?
Re:誘導放射
>一端、吸収しないと電磁波の位相を感知できないというのは、はれほれさんの誤解です。
>はれほれさんは、吸収過程(基底状態→励起状態)、
>つまり基底状態の電子のみを重視している訳ですが、
>ボルツマン分布からも明らかなように、励起状態の電子も必ず存在しています。
●はい、絶対0度でない限り、そのように理解しています。
>放射過程(自然放射と誘導放射)に関わっている電子は、
>基底状態ではなく、励起状態の電子なのです。
>繰り返しますと、吸収過程は基底状態の電子に着目し、放射過程は励起状態の電子に着目している訳です。
>つまり、放射過程(励起状態→基底状態)では、最初から励起状態に電子があるので、
>熱放射(電磁波)を吸収する必要など、そもそも最初からない訳です。
●ここまでは理解できました。
>はれほれさんは、基底状態にある電子が、電磁波の位相を感知できる一方で、
>励起状態にある電子が、電磁波の位相を感知できないと考えることの方に疑問を持たれませんか?
●ここが、わかりません。(笑)私は吸収は位相など関係なく光が電子に衝突すれば起こる現象と思い込んでいたのですが、もしかして違うのでしょうか・・・・・?
黒体放射
黒体放射の起源は原子・分子物理では、高速で飛び回ったり激しく振動している原子・分子が衝突などでエネルギーを失い、そのエネルギーがフォトンとして放出される、と古典的な描写でよく説明されています。
最も基本的な運動エネルギーをフォトンとして放出する場合は、原子・分子として対応するエネルギー準位を持っていなくてもいいわけです。
固体の場合はちょっと複雑ですが、いずれにせよマクロで見ると熱エネルギーが光として放出されるとなるわけです。
Re:黒体放射
物理の専門の方に笑われそうですが、このときは「光が波の性質を持っている」という基本的なことをうっかりしていまして沈思黙考さんのお手間をとらせてしまいました。お恥ずかしい限りです。(笑)