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悪魔のささやき

気象予報士の視点から科学的に捉えた地球温暖化問題の真相を追究。 地球温暖化を信じて疑わないあなたの耳元に聞こえる悪魔のささやき。それでもあなたは温暖化信者でいられるか?温暖化対策は税金の無駄遣い。即刻中止を!!! Stop"Stop the global warming."!!

   

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イソプレンとエアロゾル

  イソプレンやBVOC(biogenic volatile organic compound)がエアロゾル生成に関連していることは拙ブログの「イソプレンのまとめ」でも述べたが、最近イソプレンに関するいろいろな意味で興味深い論文が発表されたので触れておく。
 
 まず今年(2009年)8月のScienceのPaulotらの論文から。彼らは「NO(一酸化窒素)の少ないpristineな状態の大気中では排出されたイソプレンは速やかにOH基によって酸化されて最初にhydroxyhydroperoxidesに変化する。これらはさらにOH基によって酸化されるとdihydroxyepoxidesを生成するとともに効果的にOH基を再生する。こうして全球で100Tg of Carbon(0.1GtC)ものepoxidesの大気への流れが推定されている。これらのepoxidesは高度の水溶性を示しガス相のイソプレンの分解と観察されている有機エアロゾルの形成を結びつけるミッシングリンクとなるであろう。」と述べている。
 ちょっとわかりづらいので、この論文の背景について解説。佐藤によるとまず基礎知識として気候に大きな影響を与えると考えられている粒径1μm以下のエアロゾルの中で有機物エアロゾルは重量%で18~70%を占めている。さらにこのうちの64~95%が酸素を含む有機物が占めている。これらの含酸素有機物はVOC(非生物由来のものも存在するので単にVOCと呼ばれる)揮発性有機物の光化学反応で生じる二次有機エアロゾル(Secondary organic aerosol:SOA)と考えられている。この研究の初期段階の1980年代にはSOAを発生するVOCで重要なものは植物由来ではイソプレン誘導体であるモノテルペンなどとされ、イソプレンからはSOAはほとんど生成されないと考えられていた。しかし2002年のJangらの報告をはじめとしてイソプレンからもSOAが生じるのではないかという証拠が相次ぎ、現在ではイソプレンのSOA生成への寄与が見直されている。このあたりの有機エアロゾル分野からの研究・発展の概要は河村の論文にまとめられている。これによると量的に最も多く存在する低分子カルボン酸(蟻酸、酢酸)やジカルボン酸(シュウ酸)などの検出が初期には困難であったことが、イソプレン軽視の一因となったようである。これらのSOAは太陽光の散乱・吸収を行い放射強制力に影響を及ぼすだけでなくその親水性の高さから雲を作る時の凝結核として雲の形成にも関与するため気候へ重大な影響を与えると考えられている。エアロゾル分野での研究としては上記の佐藤および河村の二つの論文はよくまとまっており超お勧めの一品である。内容はもちろんのこと何といっても「日本語」で書かれているところが素晴らしい。(笑)最初にもどってPaulotらの論文はNOのない条件下(人里離れた森林など)でイソプレンからSOAの前駆物質と考えられているepoxidesが生成されているという確かな証拠を示したものと言えるであろう。
 次に9月のNature からKiendler-Scharrらの論文。こちらはいろんな意味で興味深い。(笑)拙ブログでも述べたように、現在の二酸化炭素温暖化説によるとCO2↑→温暖化。ここから一次生産の増加→イソプレン排出増→大気中酸化物質↓→メタン寿命延長、そしてさらなる温暖化というのが温暖化論者や気候モデルの筋書きである。このようなポジティブフィードバックは温暖化論者が最も喜ぶシナリオだが、最初のCO2↑でイソプレン排出が抑制されるという「事実」をもって間違いであると切って捨てられた。(はずだった・・・・)しかしこの論文でKiendler-Scharrらはイソプレン排出増による新たな不安?材料を提示している。従来はイソプレン排出の増加による凝結核の増加によって雲ができやすくなるというネガティブフィードバックにより-0.2~0.9W/m2の負の放射強制力が起こると考えられていた。Kiendler-Scharrらはプラントチャンバーによる実験で、イソプレンが増加するとOH基を多量に消費することによってSOAの生成が低下する。つまり負のフィードバックを弱める可能性があるとしている。このひとつの証拠として夏にモノテルペンの排出は最高になるが、凝結核の形成は春秋の方が多い。これは夏季にイソプレンの排出量が増加するためではないかと指摘している。この論文はここまでの主張で私の感想としてはイソプレンから形成されるSOAがこの系では測定できているのか?というところがよく理解できなかったくらいで別にどうということもない。ところがこの号のNews & ViewsのZiemannの記事を見て驚いた、というかやっぱりと思った。Ziemannによると凝結核が多いと小さな水滴がたくさんできるため雲が長寿命となりより多くの日光を反射するが、凝結核が少ないと結果として正のフィードバックとして働くと主張している。温暖化→イソプレン↑→凝結核↓→雲↓→さらなる温暖化という温暖化論者が泣いて喜ぶシナリオが2ページにわたって書かれている。どうやらこの人はCO2が上昇するとイソプレンの排出が抑制されることを知らないのではないかと思ったら最後の最後にArneth, A.らの論文を引用して「Consideration must be given not only to chemical-reaction and nucleation mechanisms, but also to issues such as the potential suppression of terpene emissions by elevated carbon dioxide concentrations,(以下略)」
と書かれている。記事の大部分を費やしたポジティブフィードバックによる得意の「脅し」もイソプレンがCO2に抑制されるという事実ひとつで全く無意味な議論になってしまうのだが・・・・。同様のデータはたくさんあるのだが、どうしても都合の悪いデータは認めたくないようである。(笑)
 「Nature」といえばこの世界では超一流の雑誌という評価を受けているようである。数年前に京都大学の学生に聞いた話。大学での講義で「Natureは商業雑誌だからだめだ。」と言われたそうである。さらに「信頼できるのは地味な学会誌である。」とも。暇を見ては図書館に「Nature」を閲覧に行く私を見かねての忠告だったようだが、当時の私には意味がよく理解できなかった。「学会にも所属していない田舎の人間にはNatureくらいしか情報源がないんよ。」と答えたのだが、この10年あまり「地球温暖化問題」をwatchしてきてはっきりわかった。この温暖化問題に限れば(他のテーマはスルーなのでわからないが)「京大の先生は全く正しい」ということである。温暖化をあおる、あるいは大変だという記事はNatureには載っても水を差すような記事、たとえば「永久凍土は溶けてない」などという論文は学会誌にしか掲載されないようだ。そういう意味ではNatureは私の感覚ではスポーツ新聞か週刊誌といった位置づけになる。(笑)このことはNature系の雑誌Nature Geoscienceにも当てはまるように思う。海外では健全な学会誌がまだ存在するようだが我が国の現状はどうであろうか?今年初めに温暖化問題のディベイトを企画したエネルギー資源学会のような組織もあるが、はたして「健全」と言える学会はどれくらいあるのだろうか?また日本気象学会はこの問題になんと答えるのだろうか?
                             2009年10月9日一部修正

参考サイト&論文
 
悪魔のささやき:イソプレンのまとめ 
 
 
佐藤圭. 二次粒子の生成:イソプレン酸化に関する最近の研究. エアロゾル研究23.pp172-180(2008)
 
 
 
 
Kiendler-Scharr,A. et al. New particle formation in forests inhibited by isoprene emissions.Nature 461.pp381-384(2009)
 
 
悪魔のささやき:気候モデルとイソプレン
 
Ziemann,P.J. Atmospheric chemistry: Thwarting the seeds of clouds. Nature 461.pp353-354(2009)
 
 

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