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悪魔のささやき

気象予報士の視点から科学的に捉えた地球温暖化問題の真相を追究。 地球温暖化を信じて疑わないあなたの耳元に聞こえる悪魔のささやき。それでもあなたは温暖化信者でいられるか?温暖化対策は税金の無駄遣い。即刻中止を!!! Stop"Stop the global warming."!!

   

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暁新世・始新世温度極大期;4.CIEに先行する温暖化

  PETMに代表される温暖化イベントにおいて「温度上昇が先かCIEが先か」という問いは原因論にもかかわる重要な問題である。深海底の掘削コアでは堆積率が小さく、約17万年におよぶPETMの全期間においても層準の厚さは3m未満である。それゆえオンセット時のCIEや海水温上昇の順序はいくつかの地点では「海水温の上昇がCIEより先行している」と考えられるものの、多くは「ほぼ同時期に起こっている。」としか言いようがないのも事実である。(2.CIEの原因)この問題に決着をつけたのが2007年12月にNature誌に発表されたSluijsらの論文である。彼らは堆積率の比較的大きな大陸沿岸部のNew Jersey Shelf(古緯度40N)の2か所(Bass River と Wilson Lake)の掘削コアから分解能のよいデータを提示している。
Sluijs2007Nature.jpg
 図は
Sluijs,A . et al. Environmental precursors to rapid light carbon injection at the Palaeocene/Eocene boundary.Nature 450:pp.1218-1222(2007)より


  図から明らかなように、まず亜熱帯性渦鞭毛藻Apectodiniumのシスト(Dinocyst)の大量出現(アクメ)注1)がCIEより4000~5000年早くおこり、その後でTEX86注2)による海表面温の上昇がCIEより3000年ほど先んじて起こり最後にCIEが起こっている。このデータを見る限りCIEはPETMの原因ではなく結果であると結論せざるを得ないだろう。(温暖化論者は未練がましいけどね!)このデータから何らかの環境変化が起こったことがPETMの端緒と考えられる。それから海表面温の上昇が起こり最後にCIEつまり12Cリッチな炭素の注入が起こっている。Sluijsらは海表面温の上昇からCIEまでの2000~3000年のタイムラグは海表面温の上昇が海洋の深層水温の上昇、さらに海底堆積物を溶かすまでの期間として矛盾しないとして1995年のDickensらの見解を支持している。CIEはPETMの原因ではなく結果である。そして、最初の温暖化の原因は今のところ不明と結論している。
 図を見るとCIE以後もTEX86による海水温は二地点ともに一定期間上昇を続けている。これはCIEによる温度上昇の「上乗せ」ともとれるが、PETMを惹起した初期の温度上昇の原因が継続したためと考える方が妥当であろう。論文中にはこの点に関する記載はないようだが、Sluijsは彼のサイトのPETMに関する記述「General Introduction and Synopsys」の中で次のように述べている。
「We show that the onset of the global acme of the dinoflagellate Apectodinium and subsequent surfaceocean warming as recorded by TEX86 preceded the CIE by ~5 kyr and ~3 kyr, respectively. Considering that no evidence of any additional environmental change at the CIE is apparent from our records, the input of 12C-enriched carbon may not have caused significant environmental perturbations.」
「我々は渦鞭毛藻ApectodiniumのDinocystの世界的なアクメがCIEより5000年先立っており、続くTEX86によって記録された海表面の温度上昇がCIEより3000年早いことを示している。CIEの時点では何ら付加的な環境変化の証拠が我々の記録からは明らかでないことを考慮すると、12Cリッチな炭素の流入は何ら重大な環境擾乱を惹起しなかったのかもしれない。」(ブログ主の一応の訳)
 
多くの研究者が「炭素流入=温暖化」というロジックから抜け出せない中、自身の研究に絶対の自信を持ち微塵の先入観や偏見も持ち合わせていないコメントである。さすがはこの分野で若手No.1と目される研究者である。これとは対照的に先入観と偏見に満ちた論文の例をみてみよう。たとえばNisbetらはSluijsらの上記論文を受けて、PETMにおける初期のCIE以前の温暖化について「安定炭素同位体比には影響を及ぼさない程度のメタンハイドレート(MH)が持続的に大気海洋系に流入した。」としている。炭素同位体比に影響を及ぼさないような量のMHの融解がこれほど大きな温度上昇をもたらすことは考えにくく、逆にこれほどの温度上昇をもたらすようなMHの流入ならCIEが起こらないはずがないのである。このような矛盾した仮定を平気で行ってしまうのはどうしても「温室効果による温暖化」から発想が抜け出せない典型である。また「気候感度から考えてPETMの温暖化の原因はCIEの炭素だけでは不十分」というZeebeらの論文を紹介したが(2.CIEの原因)、その解説としてBeerlingは「我々がまだ知らない気候の正のフィードバックがあるのではないか」と訴えている。論文著者のZeebeらが「温暖化を説明するには(炭素流入以外の)何か他の要因が必要である」と明確に述べているにも関わらず「実は気候感度はもっと大きいのではないか」ということである。もはやこれにはあきれてしまうしかない。彼らには目の前のデータさえ全く見えていないようだ。データを正面から見れば無理なこじつけ理論であることは明白だが、「温室効果による温暖化」にこだわってそれ以外のことは考えられない思考過程に陥っているためそのことがわからないのである。まさに典型的な温暖化論者としかいいようがない。

本項の要旨の一部は日本気象予報士会西部支部2008年1月例会(2008年1月12日)にて「暁新世・始新世温度極大期最新の知見」として述べたものです。
 
注1)
渦鞭毛藻は単細胞のプランクトンで基本的に独立栄養であるが、そのライフサイクルの一時期には従属栄養の形をとる。環境の変化、主として貧栄養状態などに陥ると休眠型のシスト(Dinocyst)を大量に作り、このシストのみ化石として残存することが可能である。Dinocystが急増したことは何らかの環境変化が海表面温の上昇に先だっていたことを示している。
 
注2)
TEX86(‘tetraether index’ of tetraether lipids consisting of 86 carbon atoms)は栄養状態や塩分とは無関係に古水温のマーカーとなる膜脂質の成分である。近代の堆積物で調べると年平均海表面温と直線関係が認められている。(海水温の絶対値も推定可)
 
Nisbet,E.G.et al.Kick-starting ancient warming.NatureGeoscience 2:pp156 – 159(2009)
 この雑誌は購読者でないと見れないかも。(陳謝)
Beerling,D.J. Enigmatic Earth. NatureGeoscience 2:pp537 – 538(2009)
 この雑誌は購読者でないと見れないようです。(陳謝)

Sluijs,A . Global change during the Paleocene-Eocene thermal maximum. General Introduction and Synopsys.p14
 
 
 

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