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悪魔のささやき

気象予報士の視点から科学的に捉えた地球温暖化問題の真相を追究。 地球温暖化を信じて疑わないあなたの耳元に聞こえる悪魔のささやき。それでもあなたは温暖化信者でいられるか?温暖化対策は税金の無駄遣い。即刻中止を!!! Stop"Stop the global warming."!!

   

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暁新世・始新世温度極大期;2.CIEの原因

 5500万年前といえば、大陸配置も現在とは少し異なっている。その頃の地質学的なイベントや大陸配置はこちらに詳しい。ただし図がないので一目瞭然とはいかないのでSluijsの総説から当時の大陸分布図を参考のために示しておく。
 petmearthmap.jpg
図はThe Palaeocene-Eocene Thermal Maximum super greenhouse:
biotic and geochemical signatures, age models and mechanisms of global changeより

CIEcarbon isotope excursion)の原因は13Cが少ない炭素のリザーバーから大気―海洋系に短期間で大量の炭素の流入があったためと考えられる。δ13Cの値について概略の数値を期した図を提示しておく。

delta13C.jpg

炭素安定同位体比の概略図






ここで簡単にδ13C、安定炭素同位体比について説明しておく。基準となる物質(多くは海洋生物のベレムナイト)と比べてどれだけ13Cの含まれる比率が多いか(プラスの値)少ないか(マイナスの値)を表している。したがって海水はほぼベレムナイトに等しいので0である。大気のCO2は海水からの蒸発時に軽い炭素の方が蒸発しやすいため(重力による分別)7‰ほど軽くなる。(-7‰)さらに光合成を行う植物は軽い炭素を好んで使うのでC4植物で-14‰、C3植物では-27‰と値が小さくなる。また海底で堆積した有機物が熱分解された熱分解起源メタンは-25~60‰(平均-30‰)、嫌気的に微生物で分解された微生物起源メタンなら-55~85‰(平均-60‰)とさらに負の値が大きくなっている。
PETMでは浮遊性有孔虫で-2.5~4‰以上、底性有孔虫で-2.5‰、土壌中の炭酸塩粒子で-5~6‰、陸域の高等植物で-4~5‰のδ13Cの負移動が起こっている。(CIE)これは負の値の大きな炭素が比較的短期間に大量に大気-海洋系に流入したと考えられる。したがって図からわかるように大気のδ13C-7‰より軽い値を持つ炭素がその起源として考えられている。
 まず、陸上生物起源の炭素(δ13C=-27‰程度)が世界的規模の大火災で放出されたという説がある。しかしこの説は当時の大火災を示す証拠がなくCIEのメインの理由とは考えにくいようだ。次にその他の仮説のほとんどすべてが海洋底に広く分布しているメタンハイドレート(methane hydrate:MH)をCIEの原因炭素に挙げている。図からわかるように熱分解起源メタン(主として深海底に存在)、微生物起源メタン(主として大陸棚などの浅海底に存在)ともに非常に低いδ13C値を持っておりこれらが何らかの原因で大気-海洋系に流入すれば効率よくCIEを引き起こすことが可能となる。
 MHの融解を引き起こした原因については多くの研究者によって種々の仮説が提唱されている。爆発流星の衝突によるもの、あるいはちょうどこの時期は北大西洋の分裂開始の時期と一致し、火山活動が盛んな時期でマグマの貫入によってMHが融解したという説がある。実際にノルウェー海の地震波探索でたくさんの排気孔のあとが見つかり、北東大西洋の炭素を豊富に含む堆積層にマントル由来マグマの大量の貫入がCIEの原因となったという説がある。また北大西洋地域の数百メートルにおよぶ一過性の隆起が海底のMHを融解させCIEの原因となったという説もある。これらの説に共通するのはCIEがPETMの温度上昇を引き起こしたとする考え方である。反対に深層水の温度上昇がMHの融解を起こしてCIEを引き起こしたとする考えもある。すなわち、CIEはPETMの原因ではなくて結果であるという考えである。たとえばDickens et al.(1995)は深層水温が11℃から15℃に上昇すれば中深度以浅のMHが融解し、CIEを説明できるとしている。またTripati & Elderfield (2005) は、南北両半球と赤道近くの中間深度の海底水温の上昇がCIEよりわずかに先行していることを示し水温の上昇がMH融解の引き金になったと説明している。
 次に放出された炭素の総量の推定について述べる。これにはCIEの大きさと起源物質のδ13Cを考慮して放出された総炭素量を推定する方法と、CIE自体が温室効果(赤外活性効果)により気温上昇を引き起こしたという考えに立脚して、現在推定されている気候感度(CO2倍増時の気温上昇)から放出された総炭素量を見積もる方法などが行われている。
 まず第一の方法では、上述のDickens et al.では、CIEの大きさを−2 ~−3‰として炭素換算で1100~2100GtC以上のδ13C-60‰のMHの融解が必要としている。二番目の気候感度から推定する方法としてPagani, M. et al.(2006)を紹介する。気候感度を1.5~4.5℃としてPETM前の平均気温が産業革命前より5℃ほど高かった推定し、これから当時の大気中CO2濃度を750~2600ppmvと見積もった。さらにここから5℃上昇させるのに必要な炭素量を3900~57000GtCと計算している。しかし、気候感度が現在いわれているものと同じでは平均気温の上昇を説明できず、もっと気候感度が大きくないといけないと主張している。ついでに当時のCO2濃度の推定について触れておく。Lowenstein,T.K. and Demicco,R.V.(2006)は塩水湖に堆積した炭酸ナトリウム鉱物から早期始新世(5600万年前~4900万年前)の温暖期の大気中CO2濃度は1125ppmv以上あったと見積もっている。その他の推定値も現在より高い値が一般的である。この事実だけからみても「CO2濃度の上昇で地球が破壊される。」というような気候警鐘家の脅し文句は根拠のないことがわかる。その他のCIEで排出された総炭素量の推定方法としてZachos,et al.(2005)は南大西洋の異なる古深度の堆積コアの分析によりcalcite compensationdepth (CCD)が海水pHの低下により2km以上浅くなったことを見出し、これから必要な炭素量は2000 GtC以上であったとしている。またZeebe,R.E. et al.(2009)は最近の論文でCIEの大きさとCCDの変化の両方を満たすようにモデルを使って計算し排出された総炭素量を3000GtCと推定した。しかしこの量では現在もっともらしいと言われている気候感度からはPETMにおける温度上昇を説明できないとし、温度上昇には別の要因の存在が必要と述べている。

参考論文
Storey,M. et.al. Paleocene-Eocene Thermal Maximum and the Opening of the Northeast Atlan.Science316:pp587-589(2007)
Cramer,B.S. and Kent,D.V. Bolide summer: The Paleocene/Eocene thermal maximum as a response to an extraterrestrial trigger. Palaeogeogr. Palaeoclimatol. Palaeoecol.224:144-166(2005)

Svensen, H. et al.  Release of methane from a volcanic basin as a mechanism for initial Eocene global warming. Nature 429:pp542-545(2004)
Maclennan,J. and Jones S.M.Regional uplift, gas hydrate dissociation and the origins of the Paleocene Eocene Thermal Maximum. Earth and Planetary Science Letters
245:pp65-80(2006)
Dickens, G. R.et al. Dissociation of Oceanic Methane Hydrate as a Cause of the Carbon Isotope Excursion at the End of the Paleocene, Paleoceanography 10:pp 965–971. (1995)

Tripati,A. and Elderfield,H. Deep-Sea Temperature and Circulation Changes at the Paleocene-Eocene Thermal Maximum. Science 308:pp.1894-1898(2005)

Zeebe,R.E. et al. Carbon dioxide forcing alone insufficient to explain Palaeocene-Eocene Thermal Maximum warming.NatureGeoscience 2:pp576-580(2009)
Pagani, M. et al. An ancient carbon mystery.Science
314.pp1556-1557(2006)
Lowenstein,T.K. and Demicco,R.V. Elevated Eocene Atmospheric CO2 and Its Subsequent Decline.Science 313:pp1928(2006)


以上まとめ

1. PETMにおけるCIEを起こした炭素源についてはδ13Cの小さな海洋底のMH特に微生物起源メタンの融解に原因を求める説が多い。
2. 融解の原因はさまざまであるが、PETMによる温度上昇がその原因であるというCIEは温度上昇の原因ではなく結果であるという説もある。
3. 暁新世のpre-PETMの大気中炭素濃度推定値はいずれも高いものが多く。1000ppmvを越えている推定値が多い。それでも生物は繁栄していた!!!

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  • by きみき
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  • 2009/08/06(Thu)16:01
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